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新林

私たちが伐木競技を続ける理由② /有限会社矢守産業

スロベニア大会に出場したチームジャパン(左から武藤 唯選手、山岡 空選手、髙山亮介選手、松村 祐選手、今井陽樹選手 提供:JLC事務局)

スロベニア大会を終えて

ソーチェン着脱競技で8.21秒を叩き出した髙山選手(提供:JLC事務局)

—— 髙山選手は今回で世界大会に連続3回出場されていますが、スロベニア大会はいかがでしたか?

髙山選手 「世界大会ならではの審判団や会場の雰囲気は、どの国でも一緒ですが、選手のレベルは年々上がってきていると感じます。大会を重ねるごとに最高点の記録が更新されていくので、参加する側としても刺激的ですね」

—— 競技大会の魅力はどんなところにありますか?

髙山選手 「大会は同じ志を持った仲間が集まる独特の雰囲気が好きですね。普段の現場と違う熱気に緊張する選手もいますが、僕の場合はその緊張感がめちゃくちゃ楽しいです」

山岡選手 「自分の今の技術力や安全性が目に見えて点数として見えることで、もっともっと上を目指そうという気持ちになりますし、身近な人から世界各地にいる人たちまで一緒に切磋琢磨し合えるのが魅力だと思います」

松村選手 「私は2人と違って林業大学校にも通っていませんし、『緑の雇用』制度※2も使わず林業を始めたので、普通に林業だけをやっていたら、横のつながりが増えないのです。競技を始めてからは、競技仲間が増え、競技の情報交換はもちろん、今どういう仕事をしてるのかといった話もします。大会はそうした仲間との出会いの場でもありますね」

U-24クラスで銀メダルを獲得した山岡選手の丸太合わせ輪切り競技(提供:JLC事務局)

—— どこの国が強いですか?

髙山選手 「毎年ドイツとオーストリアが強いです。ただ、全体的な技術力では日本人も決して負けてないと思います。練習で世界レベルの点数を出すことは簡単です。あとはいかに本番で力を発揮できるかどうかですね。そこが一番難しいです」

—— 世界の頂点まであと一歩ということですね。次回大会の目標はありますか?

髙山選手 「目標はずっと変わらず世界大会で優勝することですね。もう世界大会出場は当たり前だと自分を追い込んで、技術を磨いていきたいと思っています」

松村選手 「今回、初めて世界大会に出場したことで、次も世界を舞台に競技をやりたいという気持ちが強くなりました。そのためにもしっかり練習して、次の日本大会で良い成績を残したいと思います」

山岡選手 「これまではジュニアクラスだから残れたというところもあると思います。次からプロクラスになるので、もっと全体的に安定して点数を上げていけるようがんばります」

俺たちの“安全”は安全ではなかった

松村選手

—— そもそも、皆さんは伐木競技をいつから始められましたか?

髙山選手 「私と松村さんは2018年の大会からですね。競技歴は8年です。2018年の大会の時、僕はまだ長野県林業大学校の学生で、松村さんはすでにここで働いていました」

山岡選手 「競技年数としては、林業大学校の頃からやってるので5年半くらいです。林業経験としては4年目です」

—— 矢守産業が伐倒競技に参加したきっかけは何ですか?

松村選手 「矢澤さんと私で伐木競技をやってみようという話になり、2017年に青森で開催された競技参加者向けのトレーニングイベントに参加したことがきっかけです。今まで自分たちがどれだけ不安全なやり方だったかを気づかされて、そこから競技にのめり込んでいきました」

矢澤副社長

矢澤副社長 「伐木競技なんて誰にでもできるだろうという軽い気持ちで参加しましたが、技術の高さ、そして何より『安全性』の高さに強い衝撃を受け、自分たちの認識を改めました。イベントの帰り道、夕陽を見ながら「俺たちの安全は“安全”ではなかったな」と反省したのを今でも憶えています」

現場でも競技と変わらない方法で伐倒する

現場作業風景(提供:矢守産業)

—— 競技に力を入れることによって、現場ではどのような変化がありましたか?

松村選手 「やってみて格段に変わったと思う点は安全面ですね。この競技を始めるまでは、チェーンブレーキも使っていませんでした」

髙山選手 「一番は安全面ですが、競技では自分の狙った方向に木を倒すといった正確性を求められますので、現場での作業効率はもちろん上がります。あとは単純に、チェンソーの使い方がもの凄く上手くなりますし、チェンソーの構造にも詳しくなるので、メンテナンス技術が向上しますね」

—— 鳥取大会のパンフレットには、松村さんのプロフィールに「緑の雇用」の指導員と書いてありましたが、これはどのような資格ですか?

松村さん 「実務経験が5年以上ある林業従事者を対象としたキャリアアップ制度です。研修を受講し、現場での管理・責任を担える能力を身につけて修了することで取得できます。こうした競技経験や資格があることで、現場だけでなく、林業大学校に講師として招かれることもあります」

伐倒競技(提供:JLC事務局)

—— 競技練習が現場で一番生かされる競技は何ですか?

松村選手 「やはり一番は伐倒競技ですね。競技では、安全を怠ると大幅な減点につながるので、チェンソーの安全な扱い方が身につきます。安全作業が癖になっているので、チェーンブレーキをかけない人などを見かけると、逆に気になります。伐倒方向の精度や、つるの残し具合をしっかり目視するなども、競技と変わらない方法で伐倒しています」

髙山選手 「伐採後に丸太を造材する際も、丸太合せ輪切り競技や接地丸太輪切り競技の技術が活かされます。造材が汚いと価格が下がることもありますので、大切な技術ですね」

松村選手 「山は競技場と違いさまざまな環境があります。競技を続け、感覚だけに頼らないスキルを身に付けてたことで、どんな場所でも自分がどんな体調でも、作業の精度を落とさず、常に正確性が保たれるようになったと思います」

矢澤副社長 「会社としてもメリットは大いにあると思います。2年前に実施した長野県の林業労働財団の調査によると、当社は他社に比べて伐倒方向の精度が高いので、かかり木※3の発生率が非常に低いということが分かりました。もう一つには、当社の社員はみんな同じ伐り方をしますので、丸太の切り口が均一になるということですね。本来、受け口というのは個性が出るものですよ。ただ、うちは伐痕を見ても誰が伐ったか分からないくらい揃っていますよ」

世界大会出場が従業員の活力になる

髙山選手

—— 矢守産業の選手は普段どのように練習していますか?

髙山選手 「会社に練習場所と資材を提供していただいています。練習は週末のどちらか一日にプライペートで集まってやります。平日に仕事が終わってから体力があれば練習しに行くこともありますが、毎週土曜に練習することが多いですね。大会前は土日ともやることもあります」

—— 世界大会出場となると、費用もかかりますが、どうしていますか?

矢澤副社長 「世界大会にかかる費用は会社が負担しています。昨年10月の鳥取大会で3名が世界大会の出場権を獲得した瞬間は感動で涙が出ましたが、後々冷静になってから、渡航費の出費を考えて違う涙が出ました(笑)」

—— 山岡選手としては、やはりこうした練習環境が整った会社で働きたいということで就職を決められたのでしょうか?

山岡選手

山岡選手 「競技ができるというのも理由の一つですが、一番は安全性が高い会社だと思ったからです。林業の現場では、自分がミスをしてしまうこともありますし、誰かの事故に巻き込まれる可能性もあります。高い技術と安全意識を持った先輩に教わりながら、自分も安全性を高めていける職場で働きたいというのが一番の志望理由でした」

—— 会社が従業員の伐倒競技をサポートする理由は何ですか?

矢澤副社長 「従業員が世界大会に行かせていただいたことで、会社としてもかなり高い評価をいただけるようになりました。しかしその一方で、未だに『競技と現場は違う』と言われることもまだまだあります。ただ、実際競技をやっている会社と競技をやってない会社の安全意識の差は大きいですよ。その違いはうちを出て、他社で働くまで気づかないかもしれませんが。確かなのは、3人の世界大会出場が他の従業員の活力になっているということです。今年入社した新人も大会に出場したいと言っていますので、その費用を稼ぐために仕事を取ってくるのが私の仕事ですね」


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