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新林
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シリーズ麗しき台湾の森へ

かつてポルトガル語で「フォルモサ=麗しき島」と呼ばれていた台湾。多様な生き物が生息する豊かな森は、今どのようにして次の世代へ引き継がれようとしているのでしょうか。

台湾グリーン林業の最前線

神秘の森「雲霧林」へ

貴重な生態系を守るFSC認証林

農業部林業及自然保育署 新竹分署 夏分署長

夏分署長「ようこそいらっしゃいました。新竹分署は全国に8つある林業及自然保育署の支署の一つであり、ここ南庄エリアも新竹分署の管轄区域です。台湾では2018年からFSC認証※1の取得に取り組んでおり、当支署の管轄区域内にある国有林もすべてFSC認証を取得しました。この山林エリアは2年前に認証を取得し、今年で3年目になります」

夏分署長「この林業地では、FSCの10大原則※2を遵守するだけでなく、地域との連携や生態系ネットワーク※3の構築など、あらゆる課題に包括的に取り組んでいます。そのため、ここは台湾政府が推進する持続可能な経営戦略を実施する上で、非常に重要なモデルケースなのです」

サイシャット族 根長老 

根長老「サイシャット族にとってFSC認証を取得する利点は、私たちの意志を尊重していることです。例えばアツバクスノキ(牛樟)は、サイシャット族の『生命の木』として特別な意味を持ち、尊重されていますので、開発区域内であっても伐採されません」

樹齢50年のタイワンスギを伐る

樹齢50年、直径80cmのタイワンスギ

根長老「ここは、台湾の固有種であるタイワンスギ(台湾杉)やコウスギ(香杉)などが植えられている経済林です。今日はあいにくの天候ですが、晴れていればすぐ先に美しい台湾海峡が見えます。ここは木々が特に良く育つのが特徴です。台湾全土でも、タイワンスギがこれほど美しく、大きく育つ場所は大変貴重です」

根長老「FSC認証の導入によって、私たちの労働環境も改善され、伐採の際には防護服の着用が義務付けられるようになりました。防護服が高価なので負担は大きくなりますが、林業従事者の安全が第一ですからね」

日本人から伝わった伐採技術

成長が早く年輪幅が広いタイワンスギ

根長老「こうした伐採技術は、かつて日本統治時代に日本人から教わったものです。伐採の技術が未熟だと、断面にヒビが入ってしまい、木材の破損を招きます。できるだけ低い位置で切り、断面の段差をごくわずかにできる職人こそが本当に優れた職人なのです。私たちの祖父たちの優れた能力には、当時の日本人も驚かされていました。今日伐倒を担当した彼もまた、祖父から技術を受け継ぎ、改良と経験を重ねてきました。彼らの技術は今の台湾政府からも認められています。

ここにはかつて樟脳の原料となる天然クスノキ林が広がっていました。日本人がこの地で初めてクスノキを伐採したのが1909年のこと。1910年代になると日本人は、台湾の3カ所に日本のヤナギスギを植林する実験区をつくり、南庄が台湾で最初の林業地となりました。ここには当時日本人が最初に植えたヤナギスギが今も残っていて、樹齢100年を越えています。その木は私の祖父が植えた木なのです」

台湾の植林と環境活動

山の中でいただいた台湾のお弁当

夏分署長「台湾は植樹活動が多く、地域ごとに異なる対象向けに実施されています。企業、民間団体、学校など、さまざまな形態で植樹活動に参加する機会があります。

特に企業では、生物多様性条約(CBD)※4において、2030年までのネイチャーポジティブ※5と、企業への生物多様性リスク開示が重視されています。そのため、ますます多くの企業が概念的にも実質的な必要性の面でも、こうした経験と参加を必要とするようになっています。

左からNCMの吉岡、FSC台湾事務所マネージャーの黃奎榮さん、サイシャット族の根長老

さらに台湾では今、環境に配慮し倫理的にも正しい製品を求める動きが広がり、あらゆる企業のESG経営※6が求められています。これに関して政府による介入は、あくまで仲介役としてですが、企業やコミュニティにプラットフォームを提供し、環境ガバナンスやコーポレートガバナンスのさらなる発展を促す環境を整えています」

生物多様性の保全に配慮した森林施業

植林場所まで、林道を外れて森の中を歩いて移動することになった。目的地までは徒歩10分。大した距離ではないと思っていたが、しばらく歩くと方向感覚を失うほどの霧に包まれた。前を歩く人の蛍光色のビブスを頼りに、雲の中のような世界を歩く。少しでも遅れると遭難しそうだ。作業をする方たちは苗木を担ぎ、この山の中を歩いて運ぶ。その数は一日に500本にもなるという。重労働だが、地面の植栽を保護し野生動物の生息地を守るためも不要な作業道は開設しない。伐採した原木も、架線によって搬出されているという。

シダや苔が豊かに繁茂する森の中を抜けると、明るく開けた場所に出たことが分かった。どうやら右側は崖になっているらしい。真っ白の霧しか見えないことに根長老も気の毒に思ったのか、スマホを取り出して晴れた日の景色を見せてくれた。

根長老「今日は見ることができず本当に残念ですが、晴れた日はここにとても美しい景色が広がっています。向こうには日本統治時代に植林されたヤナギスギの山も残っていますが、原生林も多く、遊歩道が整備されてる観察区もあります。ぜひまた来てください。ここはもともとは荒廃した国有林でしたが、今では多くの在来種を復活させ、元の森林の状態に戻したのです。そこで現在この林業地では、FSCが生態系サービスの実証モデル地とすることを目指しています」

白い目印の場所に苗を植える作業を体験

サイシャット族の伝統工法

斜面の下まで続くラハン

根長老「私たちは“ラハン”と呼んでいますが、正式な名称はありません。“ラハン”とは中国語で“行ごと引き伸ばす”という意味です。ラハンを設置する第一の理由は苗木の保護です。ここは山羌(キョン)などの野生動物がたくさん生息しているので、苗木を植えると動物が食べてしまうのです。しかし私たちが植える苗木は生存率が99.9%に達しています。ラハンによって動物が近づきにくくなり、苗木を食べるのを防ぐのです。

第二の理由は、台風や大雨による土砂の流出を防ぐためです。大雨で大量の水が流れてきても、枝の両側に水が分散されるのです。第三の理由は、乾燥から土を守り、保水力を高めるためです。苗木を植えた後、僕らが水をやりに行くわけにはいかないですからね。朝に土から発生した水蒸気を枝が吸収し、太陽が出ると、ゆっくりと枝から水分を放出するのです。つまり、自然に水やりをしているようなものなのです。これらの効果により、土壌の水分や養分が保たれ、樹木の成長が早くなります。

さらに、伐採や間伐の際に出る森林残渣を有効活用することで、CO2排出の削減にもつながります。現在、このような方法は、自然を活用した解決策(NbS:Nature-based Solutions)として注目を集めていますが、以前の林務局(現・農林部林業及自然保育署)はまったく理解していませんでした。私たちにとっては先祖から受け継いだ伝統の知恵でしたが、彼らがその価値にようやく気づき、評価したのです」

木材自給率の向上に向けて

高級棺桶用材となるタイワンスギの原木

夏分署長「国産材の活用を促進するため、学校の机や椅子に国産材の使用を進めています。学校では非常に多くの机や椅子が使用され、定期的に交換される必要があるため、この需要をすべて国産材で賄うことができれば、国産材の生産と販売はさらに促進されるでしょう。さらに生産側、特に現場での伐採や中間加工、集材、乾燥といった工程においては、機械購入時に補助金を支給するなど、さまざまな支援を行っています。

また、国民への啓発活動を通じて、いわゆる地産地消の概念やカーボンフットプリント※7の削減方法を浸透させ、国民に理解してもらう取り組みも続けています。学校では環境教育を通じて「木育」を推進し、日常生活の中で木に触れる機会を創出しています。このような活動を通じて、地元の木材の重要性や木材と人間との相互関係を感じ取れるようになることで、国民が国産材を受け入れやすくなることを期待しています」

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