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新林

森の声を聴きに行く―演習林を訪ねる旅

「エコツーリズム」という言葉が広まり、自然に触れる旅のかたちも少しずつ変わってきました。そんな今、注目したいのが「演習林」です。研究の場でありながら、一般にもひらかれた森には、 自然との関わり方を考えるヒントがあるかもしれません。


エコツーリズムとは
エコツーリズムには明確な定義がされておらず、考え方は様々です。
その中でも共通しているのは、「自然や歴史などの資源について、体験と学びを通じてその価値を理解しながら、同時に守っていく」ということ。また、観光によって地域の人々が資源の価値を理解し、地域社会が活性化することも重視されています。

演習林とは
演習林とは、大学などが森林の研究や保全を目的に管理している森。
全国に約77か所あり、合計面積は約137,000ヘクタールです。


気軽に遊びに行ける演習林

信州大学 志賀自然教育園(長野県下高井郡)

信州大学志賀自然教育園Facebookより

志賀自然教育園は、上信越高原国立公園・志賀高原の北麓にあり、国内有数の自然保護区域にある野外教育・研究拠点です。縄文時代に噴出した溶岩で作られた台地に、亜高山帯針葉樹の原生林や高層湿原など、多様な生態系が広がっています。

楽しみ方のすすめ

・マップを片手に自然観察してみる
約3.5kmの自然観察路(ネイチャートレイル)は、ホームページでマップが公開されています。沢山の見どころが記されているので、マップを片手に散策して、園内にある解説板を見ながら自然の営みについて学ぶことができます。
・高山植物をじっくり楽しむ
園内にはロックガーデン(高山植物園)があり、日本の高山植物が約50種類育てられています。雪融け後の5月上旬から花が咲き始め、7~9月には果実も実るんだとか。ロックガーデンで見た植物が、ネイチャートレイルでの観察の手掛かりになるかも。

【信州大学 志賀自然教育園】(HPはこちら
園内は受付不要・無料で散策可能。資料館は不定休のため、見学予定の場合は事前に連絡を。
〒381-0401 長野県下高井郡山ノ内町志賀高原 信州大学教育学部附属志賀自然教育研究施設内
開園期間   4月下旬~11月上旬
開園時間   午前9時~午後5時30分
休園日       無休(資料館のみ不定休)

北海道大学 苫小牧研究林(北海道苫小牧市)

苫小牧研究林Xより

苫小牧研究林は市街地からほど近い場所にあり、市民の憩いの場としても親しまれる研究林です。約330年前に噴火した火山灰の土壌に広がる森は、大規模な湿原や湧水河川とも隣接しており、バリエーション豊かな“北の生態系”を楽しめます。

楽しみ方のすすめ

・バードウォッチングに挑戦してみる
苫小牧研究林は愛好家から人気の野鳥の宝庫。季節の渡り鳥や留鳥のさえずりを近郊で楽しめるのが魅力です。双眼鏡と野鳥図鑑を用意して、じっくり静かに観察してみてはどうでしょう?。色や動き、鳴き声で識別メモを残すのがコツ。
・展示品と一緒に学びを深める
樹木園エリア内には森林資料館・記念館(※2025年11月より設備移転のため休館中)があり、樹齢数百年を超える巨木や野生動物の標本などが収蔵されています。散策と一緒に、研究施設ならではの楽しみ方をしてみては?

【苫小牧研究林】(HPはこちら
樹木園の入園は自由。一般開放区域を除くエリアへの入林は申請書の提出が必要です。
※下の池周辺のヒグマ出没を受け、当面の間、一般来林者の樹木園エリアの入林を中止しています。
最新情報は公式HPをご確認ください。
〒053-0035  北海道苫小牧市字高丘
TEL: 0144-33-2171(平日8:30~17:00)


充実したガイドツアーで楽しむ演習林

京都大学 芦生研究林(京都府南丹市・美山町)

芦生もりびと協会HPより

芦生研究林は京都大学が約100年にわたり守り続けてきた森で、日本海型と太平洋型の気候が交わる独特の環境が、他に例を見ない多様な生態系を育んでいます。森の奥には歴史的な森林軌道の廃線跡も残されており、近代化産業遺産としても価値がある場所です。

楽しみ方のすすめ

ガイドツアーに参加してみる
芦生もりびと協会所属団体の認定ガイドによるツアーが行われており、森の成り立ちや現状、森で暮らす生きものについて学びながら散策出来ます。様々なプランが用意されているので、山遊びが初めての子どもから自然好きの大人まで安全に楽しめます。
里山エリアまで足を延ばしてみる
芦生研究林のある美山町は、里山文化も魅力的。研究林の散策後は、かやぶきの里や道の駅に足を延ばして、里山の景観と地元の食を楽しむのがおすすめ。地域の暮らしに触れ、湧水や神社も巡ると、森で学んだ自然の姿が生活とつながって見えるかもしれません。

個人で散策する場合は、入林規定を確認して申請書を提出。※決められたエリアのみ散策可能
【芦生研究林】(HPはこちら
〒601-0703 京都府南丹市美山町芦生斧蛇1
TEL 0771-77-0321(受付時間:平日9時~17時)
【芦生もりびと協会】(HPはこちら
〒601-0703 南丹市美山町芦生上ノ山21
Mail info@ashiu-moribito.jp
入林期間 4月(安全確認後)~12月(積雪まで)

新潟大学 佐渡自然共生科学センター演習林(新潟県佐渡市)

佐渡演習林HPより

佐渡演習林は大佐渡山地に位置し、急斜面・強風・多雪といった厳しい環境が育んだ天然林が特徴的です。独特の樹形をもつ推定樹齢500年以上のスギ巨木や、本州では絶滅危惧種となった植物や昆虫類など、ダイナミックな自然を体感することが出来ます。

楽しみ方のすすめ

原生林エコツアーに参加
演習林は一般公開されておらず、観光交流機構のエコツアーを通して入ることが可能です。専門ガイドのもと、ルートごとに迫力満点の杉巨木や水辺林を満喫できます。より深く学びたい場合は、年1回開催される演習林主催の公開講座への参加もおすすめ。
・佐渡の海と一緒に楽しむ
佐渡島は森・里・海がコンパクトにまとまっているため、河川でつながる生態系を実感することが出来ます。原生林エコツアーの後は入江や磯へ移動して海の生き物に出会うプランに。森で見た落ち葉や栄養が海を支える循環を実感できそうです。

ツアーは3日前までに観光交流機構への申し込みが必要。
一部ツアーは中学生以上のみ参加可能、未成年者は保護者の同伴が必要となります。
【佐渡自然共生科学センター 演習林】(HPはこちら)
〒952-2206 佐渡市小田94-2 TEL:0259-78-2613
【佐渡観光交流機構】(ツアーの情報はこちら
TEL 0259-27-5000
開催期間 5月上旬~11月


番外編―家でも演習林を楽しんでみる

デジタル演習林(HP)

全国大学演習林協議会と日本長期生態系研究ネットワーク(JaLTER)が共同で運営するサイトで、自宅でも演習林を体感できるデジタル森林教育コンテンツが公開されています。
散策しながら森の観察ができる360度VR動画や、研究方法についての解説動画など、コンテンツの内容も様々。
はじめて森にふれる人から深く学びたい人まで、どこにいても森との距離がぐっと近づきます。

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