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新林

天竜の森で道をつくってみる

木こり活動レポート #3

2021年7月16日、静岡県浜松市天竜区のKicoroの森で、木を運び出すための作業道整備を行いました。

手作業で道をつくる

道づくりの道具を手にして林道を歩く木こり隊

今回の木こり活動では、先人たちの知恵を身をもって理解するため、つるはしや鋤簾(じょれん)を使った手作業での道づくりにチャレンジ。掘削チーム、土運びチーム、除伐チームに分かれて道をつくり、この日の作業目標1mを大きく上回る、全長20mもの整備を行うことができました。

自然に倣う

ツルハシを持って作業する二人の木こり隊

Kicoroの森が目指すのは、自然にできるだけ負荷をかけない道づくり。

土をできるだけ盛らず、岩石や大木を避け、小型作業車両がギリギリ入る最小限の幅で道をつくります。削った土や石で路肩を固め、のり面に苗木を植えて道を補強。雨水で道が削られないよう、路肩に水を逃すための角度を付け、流速が遅くなるように傾斜を工夫します。

枝で路肩を補強する木こり隊

前田さん「自然界に不自然なものはありません。不自然なものを作ると、それを自然が押し流して自然な状態に戻そうとするんです」

古い石垣のある林道で木こりの前田さんの話を聞く木こり隊

先人たちの知恵から学ぶ

Kicoroの森に残る昔の街道跡には、室町時代に造られた古い石垣と杉の大木が並び、大きく育った杉によって道が塞いでいます。

良く見ると木の根が石垣の隙間に張りめぐらされ、根っこと石垣が一体となってお互いを支え合い、500年もの月日を耐え抜いていました。

「現代人の考え方だと邪魔な木は伐ってしまうのに、この木が残っているのは何故なんだろうと考えるんです。昔の人は、自然に逆らわず、植物の力を借りて作ったものが一番堅固だということを知っていたのではないでしょうか。近年の自然災害を見ていると、先人たちが大事にしてきたことを、もう一度学び直すときなのかなと思いますね」

前田さんプロフィール写真

[今回の先生]前田 剛志 木こり/ Kicoro代表

2003年、天竜に移住。林業に従事するかたわら、木の伐採からものづくりまでを体験する「FUJIMOCK FES」や、学校での出前授業など、県内外を問わず森のことを伝えるためのさまざまな活動を展開している。

参加者のコメント

それぞれの場所で道づくりの作業をする木こり隊

田中さん 初回から全て参加してきましたが、今回が一番疲れました!水道(みずみち)をどこにするか、どうやって路肩を補強するかを考えながら作業するのは楽しかったです。

高田さん 普段何気なく使っている木材は、ただ立木を伐るだけでなく、その前後のいろいろな作業工程を経て私たちの手元に届いているんだなと言うことを知りました。疲れました!

内田さん こうやって会社の人と山で作業するのはいいですね。今日は道づくりでしたが、木も伐ってみたかったですね。一連の流れを経験すれば、道づくりの重要性ももっと理解が深まると思います。

吉岡さん 今回、機械を使わず作業したことで、気づきが多かったですね。山の微妙な傾斜を感じたり、路肩の土をどうやって硬くするか考えたり。みんなが自然と自分の持ち場を確立して役割分担しながら作業していたもの面白かったです。

感じたこと、その先へ
木こり活動に参加したNCM社員によるリレーコラム

名古屋で育った私は、小学生の夏休みに奥三河の豊根村へ短期の山村留学をしました。留学体験のある一日、道の無い山に分け入り、木を伐り倒す理由、倒す方向、方法を教えてもらって、小学生のみんなで交代になたとのこを使って木を伐り倒し、枝を払ったことを覚えています。森との付き合いの一番古い記憶です。以来約30年ぶりに木の手入れのために森に入りました。おぼろげな記憶の答え合わせをしながら、自分の森との接点をつなぎなおす貴重な機会となりました。

 さて、今回私は木を運び出す道の整備に参加しました。木の成長は数十年という長いサイクルのため1回伐り出したら、同じ道をつかうのは何十年後になるのだそうです。人の手で作った道は長年の雨風で再びあるべき自然の形に戻ってしまうため、だからこそできるだけ自然に逆らわない道の作り方を考えるそうです。

 森と付き合ってみると、人の人生一代では到底終わらない、ながい時間の中に身を置くことになります。森を分け入る一筋の道をつくりながら、今後の日本の山林にも遠い将来のあるべき自然な姿を見据えて、関わりを持ち続けたいと感じました。

マネジメント・コンサルティング部門
ディレクター 佐久間周一

天竜の森で道をつくってみる 掲載号

新林 第3号の表紙

新林 第3号
山林(やま)の担い手に会いに行ってみる

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