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新林

森と重機

チェーンソーで伐った木を集材機に載せて森から降ろす。今も日本の林業の現場では、このような昔ながらの方法が主流です。一方で平成以降は、「高性能林業機械」と呼ばれる大型の重機が活躍するシーンも、着実に増えてきました。 立木の伐倒から造材までを1台で完結できる林業重機界の風雲児「ハーベスタ」を筆頭に、それぞれが個性的なキャラクターを持つ、7種類の代表的な高性能林業機械が活躍する場面を見比べてみましょう。

そもそも高性能林業機械とは?
従来の林業機械に比べて高い性能を持ち、複数のプロセスを1台でこなす多工程機械のこと。導入することで現場の省力化や労働安全性の向上などのメリットがあり、林業の中心となることが期待される。

①ハーベスタ
伐倒(立木を切る)、枝払い(細かな枝を伐り落とす)、玉切り(丸太を分割する)、集積の4工程がこのハーベスタ1台で完結する。北米などの平坦な地盤の現場では大活躍しているが、急峻な森林の多い国内では、そもそも立木の近くまで近寄れない場合も多い。国内に1918台存在。*1

②スイングヤーダ
⑤のタワーヤーダに比べ、より簡便に架線集材を実現するための重機。作業中に旋回が可能なため、運搬中の木材の位置をある程度コントロールできるなど現場での小回りが効く。集材距離は最大でも100m程度のため、主に近距離での集材に力を発揮する。国内に1095台存在。

③フェラーバンチャ
立木を伐採(フェリング)し、そのまま保持して集材に便利な場所へ集積(バンチング)する。従来の現場で最も事故が多かった立木の伐倒作業をきこりに代わって請け負うが、ハーベスタ同様、主に林道沿いなどある程度整備された地盤上での限定的な運用となる。国内に161台存在。

④フォワーダ
玉切りした短幹材をグラップル(掴む)クレーンで荷台へ積載して輸送する、集材専用の自走式機械。トラックが入り込めない不整地や軟弱地などでも運行可能なゴムクローラ型の足回りを持つ。国内に存在する高性能林業機械の中では、最も台数の多い機種となる。国内に2784台存在。

⑤タワーヤーダ
その名の通り、④のフォワーダにタワー(人工支柱)を背負わせたような形をしている。木材の地上輸送が難しい場所において、機種によっては500mにも及ぶ遠距離間をワイヤーで繋ぎ、木材を空中運搬する「架線集材」と呼ばれる工法を実現する。上げ荷・下げ荷ともに利用可能。国内に149台存在。

⑥プロセッサ
ハーベスタから伐倒機能を取り除いた機構を持っており、林道や土場などで、集材されてきた木の枝払い〜玉切りまでを連続して行う。チェーンソーを用いて人力伐倒した材をプロセッサで丸太へ加工、といったコンビネーションでも活躍できる。国内に2155台存在。

林道と土場
大型の林業機械にとっては何よりも重要となる林道。道幅や路面の傾斜角などによっては、現場で運用できる重機の種類が限定されてくる。

土場は森から伐り出した木材を一時的に保管するための集材場で、この場所まで来ることが一旦のゴール。ここから木材をトレーラーに載せ替え原木市場などへ出荷する。


参考文献
・林野庁情報誌「林野-RINYA-」平成28年11月号 知ってる?知らない? – 林業機械 –
・森林作業システム高度技能者育成事業 研修教材2019 「路網を活かした森林作業システム」

注釈(*1)
林野庁が毎年公開している「高性能林業機械の国内保有台数の統計」内、2020年の値を参照。

森と重機 掲載号

新林 第2号の表紙

新林 第2号
天竜の森で木を運び出してみる

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