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新林

木材輸送の歴史

日本の山林では、伐り出した木をどのようにして運び出してきたのでしょうか。
先人の知恵と技術の発展の歴史を紐解いてみましょう。


集材・搬出 〜山から土場まで〜

明治の中頃まで、伐り出した丸太の搬出は、修羅(しゅら)出しや桟手(さで)と呼ばれる装置を組んで山の上から土場まで木材を滑らせる方法や、人力による担ぎ出し、地車、馬搬が主流でした。修羅出しや桟手は一度に大量の木を運び出せる反面、木材が破損してしまうことが欠点でした。

修羅出し(しゅらだし)

谷筋に沿って縦に並べた丸太の上に木材を滑らせて土場まで丸太を下ろす方法。
修羅のほかに、両側に丸太を並べて板や枝葉を組み合わせて作った桟手(さで)という装置で木を滑らせて運ぶ方法もあった。

堰出し(せきだし)・鉄砲流し

木を組んで堰を作り、ダムのように水をためてから一気に放水し、木材を流す方法。

馬搬・地駄曳き・土曳

馬に木材を曳かせて運ぶ方法。車や重機の登場によって衰退したが、2010年に岩手県遠野市で馬搬技術の普及啓発を目的とした馬搬振興会が発足。環境に配慮した集材方法が見直されている。

明治中期から木馬(きんま・きうま)、明治後期から架線集材が導入されると、林道が整備される昭和30年代頃まで、木材を破損することなく搬出する方法として活躍しました。

木馬

丸太を乗せて運ぶための木製のそり。盤木を並べて整備した木馬道の上を滑らせる。木馬曳きの仕事は重労働なうえ、木馬の制御が難しく、命懸けの危険な作業だった。

架線運材

作業道を開設できない急峻な山で利用されてきた搬出方法で、傾斜地の上から下に鉄線やワイヤーロープを張り渡し、搬機に木材を吊り下げて搬出する。作業道を作る必要がないため、山を痛めないというメリットがある。

神楽桟(たてしゃち・カグラサン・ろくろ )

低い所から木材を引き上げるための人力ウインチ。架線も神楽桟も元は鉱山用、建設用として発達した技術と言われている。

昭和30年代に入ると、作業道の整備とエンジン駆動の林業用機械が普及し、集材機や小型運材車、林業用トラクタ、森林モノレール、奈良県のヘリコプター集材など、集材・搬出の機械化が進みました。平成から現在にかけては、高性能な林業機械の導入と、大規模な林道整備が急速に進み、効率性と安全性が重視されていくようになりました。


運搬 〜土場から貯木場まで〜

道路が整備されていない時代の木材の運搬は、川を利用した流送が主流でした。そのため、歴史ある木材の産地は水運の条件が整った地域に限定されていました。
明治の中頃から昭和にかけて全国でダムや橋の建設が始まると、流送は一気に衰退。道路の整備が進むと馬車などを使った陸送が始まりました。また、明治30年頃から国による伐採事業が本格化し、明治43年には津軽で日本初の森林鉄道が開通しました。その後、自動車と交通網の発達によって森林鉄道は徐々に数を減らし、昭和30年代から現在にかけては、トラック輸送が主流になっています。

筏(いかだ)流し

流送には、丸太を筏に組んで、人の操作で流送する筏流しと、筏を組まずに上流から下流へ一斉に放流する管流し、主に製材を運ぶために舟に乗せる舟運があった。
木材を運搬するための林業用の鉄道。主に国有林の輸送用として全国で整備され、明治時代から昭和40年代頃にかけて活躍した。

参考文献:
『天竜市史 下巻』
『目で見る北遠・周智・浜北の100年』 坪井俊三 監修/郷土出版社
林野庁HP(https://www.rinya.maff.go.jp/j/kouhou/eizou/sinrin_tetsudou.html)

木材輸送の歴史 掲載号

新林 第2号の表紙

新林 第2号
天竜の森で木を運び出してみる

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