山林(やま)と担い手
日本では、森林が国土のおよそ3分の2を占めており、そのうち約6割は、民間が所有する私有林です。私有林は、個人・家族、民間企業等のさまざまな主体によって所有・利用されています。ここでは私有林に関わる大まかな主体とそれぞれの関わり方について紹介します。
主に林業目的で
所有・利用される山林
主に木材の生産を目的とする山林。
そのほとんどが木材生産を目的として
先人が育成してきた人工林である。
資源量の増加に伴い、
その多くが伐採可能な段階を迎えているが、
再造林が十分になされないなどの
課題も抱えている。
林業が主な山林の担い手
家族/個人
林業(保有山林面積が1ha以上の世帯)を中心とした家族で経営を行う法人化していない林業経営者。
自ら所有山林で施業を行うこともあれば、森林組合や民間企業等に施業を委託することもある。農業など林業以外からも収入を得ている兼業林家も多く存在する。
森林組合
森林所有者が組合員となる協同組合。
組合員が所有する山林の施業を受託する。植林、下刈り、間伐といった森林整備の中心的な担い手。
地域の林業経営の重要な担い手であり、地域の森林における経営管理の集積・集約化や木材販売の強化等の取り組みを進めていくことが求められている。
民間企業等
株式会社などの法人である林業経営者。
主に山林所有者等から立木を買ったり施業を受託したりして、造林・伐採等の作業を担っている。特に主伐の中心的な担い手。
民間企業等においても事業量の確保は課題であり、山林所有者等に施業の集約化を働きかける取り組みが進められている。
主に林業以外の目的で
所有・利用される山林
環境保全、景観保全、生物多様性保全など
森林が持つ公益的機能の保全を目的とした
公共的な活動や森林レクリエーション、教育、研究など
様々な目的で利用される山林。
近年は、こういった林業経営以外の
山林の活用方法も注目されている。
林業以外が主な山林の担い手
森林系NPO法人/市民団体
森林への知識や関心の高い市民や地域の林業関係者、専門家など様々な人で構成される。活動内容も森林整備、森林保全、環境教育、レクリエーション、登山道整備、普及啓発など非常に幅広い。
CSR活動する企業
CSR(企業の社会的責任)活動として山林に関わる、借受林や自社所有山林の保全、市民を対象とした森林環境教育、従業員等による森づくり、イベントの開催など、活動内容は非常に幅広い。
大学
林学の研究・実験のフィールドとして利用。
寺/神社
寺社仏閣が所有する森林。寺社林、鎮守の森と呼ばれることも。
その他山林をフィールドにした事業者
森林アスレチック、アウトドアスポーツなど自然の中で体を動かす施設の運営、「森の幼稚園」と呼ばれる森林自然環境を利用した幼児教育など様々な事業が行われている。
ワーケーション施設の整備、キャンプ等のための森林レンタルサービス等も注目されている。
管理が適切に
行われていない山林
山林の中には、木材価格の低迷などにより
所有者の管理経営への興味関心が薄れたものや、
施業を行なったとしても
採算が合わないものなどをはじめ、
管理が適切に行われていないものも多く存在する。
所有者が地域外に住んでいる山林、
相続が適切に行われていない山林、
そもそも山林の存在を
把握していない所有者も少なくない。
山林の管理を促進する取り組み
森林経営管理制度(市町村)
2019年度からスタートした制度。市町村が山林所有者と管理経営の担い手の仲介役となり、管理が適切に行われていない森林について、経営管理の集積・集約化を進める。市町村が所有者の意向を聴取した上で、林業経営に適した森林を林業経営者に再委託し、林業経営に適さない森林は市町村自ら管理する。
林業経営者
③経営管理の再委託
森林経営管理制度(市町村)
①意向確認
②管理委託
管理が適切に行われていない山林
林業経営に関わる主体を内外から支える主な人材
森林施業プランナー
施業の集約化を担う。
山林所有者に施業提案書を提示して施業を働きかけるに当たり、一定の技能を持つと認定された人材。
森林組合や民間事業体の従業員が認定を受けている。
森林総合監理士(フォレスター)
森林・林業に関する高度な知識と現場経験を有した人材。
市町村が立てる森林計画の技術的支援、森林施業プランナー等への指導・助言を行う。
林業普及指導員
森林所有者等に対して森林施業技術の指導及び情報提供等を行う人材。
全国の都道府県や自治体に配置されている。
[編集にあたって]編集の都合上、「林業経営に関わる主体」と「林業以外の分野で山林に関わる主体」に二分しましたが、実際には両方の分野に関わっている主体もあることが推測されます。森林との関わり方が多様化している現在においては、そういった主体が今後増加していくことも十分に考えられます。