③架線集材おさらいノート
架線集材について知ってみる
今回学んだ架線集材についておさらいしてみましょう。
(1)架線集材(かせんしゅうざい)とは
山の中にワイヤーロープを張って、伐採した木を吊るし集材機で巻き上げながら、集積場まで運ぶ集材方法。
特徴
- 急峻な地形ほどシステムを構築しやすい。日本の急峻な山とも相性◎
- 間伐や皆伐などの作業の仕方、地形や周辺環境によって策張りの種類を変えられる
- 適切な選択と設計が出来ていれば、残して育てる立木を痛める心配なし
- 戦前からの林業地や天然林が残っていた地域で用いられることが多い
メモ:古くからの林業地や天然林が残る山深い地域の大きな木を搬出するために発展してきた!?
(2)架線系集材方法の移り変わり
①昭和初期
運材索道が用いられるように
- 山林内の尾根筋と谷にワイヤーを張り、滑車に吊るした木を重力だけで下方まで滑らせて落とす。
- ブレーキはあるけど、動力はない。
メモ:使い終わったら回収せずに捨ててるケースも。今も残骸を山で見かけることがあるらしい..!!
②昭和30年ごろ
架線集材が盛んに
- 集材機が開発され、ワイヤーを巻き上げることでワイヤー自体が動いて木を斜面の上に引っ張り上げたり、空中に吊り上げたりと可動域が広くなり集材力が高まる。
- 反面、ワイヤーの数が多くなり架設する難易度が高くなった = 事故も多い
③昭和40年ごろ
ヘリコプター集材の登場!
- ヘリコプターから送られてきたワイヤーに木をくくって運ぶ
- 架線を張る手間が掛からないが、集材コストは架線集材より高い
- 材木価格が高かった時代は盛んだった
→木材価格が低くなると、集材コストが見合わなくなるように..
④平成20年ごろ
路網整備が普及!
- 山を掘削し、未舗装の作業道をつけて林業用重機で集材する
- 一度作業道がつけば、労働負荷少なくコストを抑えた集材が可能に
→一方、作業道をつけられない急峻な地形の集材が後回しに
⑤現在
やっぱり架線集材が必要…!?
- 作業道がつけられない急峻な地形でも集材ができる
- ヘリコプター集材より作業コストが抑えられる
- ただ、架線技術や機械の精度がS30年代から変化してこなかった…
(3)現在の架線集材の課題
架線技術
- 現場ごとに架線の張り方が違い、それぞれ見て覚えるのが主流
→学校など、技術を習得する体系が整えていく必要がある
メモ:「見て覚えろ」と言っても現場では架線全体を見渡せないし..…
機械の精度
- 日本は、地形にあった小さくてシンプルな機械で複雑に架線を張っている
- 海外は、大きく高性能な機械でシンプルな架線を張っている
→システムの発展が進んでいる海外の架線技術と日本の架線技術を融合させ、日本に合った手法を開発することが重要
メモ:例えば日本の地形にあったサイズの高性能搬器が開発されないかな..
これからの架線集材に必要なこと
◉架線集材が必要となってきている時代かも…!?
◉それぞれの地域や事業体に合った架線集材システムを作り出していくことが重要
(過去のやり方を踏襲することや欧州のシステムを導入する二者択一ではない。)
◉必要に応じて様々な集材方法を選択したり組み合わせることが重要
◉森づくりの方向性に重きを置いた提案ができる人が育っていくことが大切…!!
メモ:過去のやり方を踏襲することや欧州のシステムを導入する二者択一ではない。
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