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新林
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シリーズ架線集材について知ってみる

山の中に数100mから1kmを超える長さのワイヤーが張り巡らされ、そのワイヤーを伝って伐った木が空中に吊るされ、運ばれて …

②久住さんの架線教室

架線集材について知ってみる

2023年10月19日、NCM大阪オフィスに奈良県フォレスターアカデミー講師の久住一友さんをお招きして、架線集材教室を開きました。模型を使って設置方法や集材の仕組み、危険作業を確認しながら、架線の基礎知識からお金の事情、海外の集材方法まで、根掘り葉掘り訊いてみました。

久住林業 代表 久住一友さん
1980年大阪府生まれ。専門学校修了後、兵庫県の養父町森林組合(現・養父市森林組合)にて育林に従事。育てた木の収穫方法を習得するため、大川村森林組合(高知県)で架線集材を学び、林業架線作業主任者免許を取得する。その後、谷林業株式会社(奈良県)で架線集材班を作り人材育成を担当し、2016年に独立。現在は、奈良県フォレスターアカデミーほか各所で架線集材の指導を行っている。https://kusumi-forestry.com/


写真左より:野田(NCM)、久住氏、前(NCM)、田中(NCM)、中田(NCM)

中田:模型では見えやすいように立木を減らしていますが、実際の現場ではもっと木が生えていて架設の準備や設計が大変そうですね

設計は等高線が入った地図を見ながら索張り*方式や位置を考えます。次に山の横から見た横断図を使って架線が通る高さを確認し、プラン1が決まります。現地に向かう前には複数のプランを準備しておきます。その後、現地で立木や斜面の状況に合わせて調整しながらプランを1つに絞ります。架線にかかる木を伐り準備を始めるのはそれからです。

中田:架設のコストはどれくらいかかりますか?

場所や張り方で変わりますが、例えば全長700mのエンドレスタイラー式なら、4、5人で5日から1週間。5人×7日で35人工。1人2万円としたら架設だけで人件費が70万はかかる計算です。

中田:何本出せば架線集材で元が取れますか?

僕が聞いた話では「1,000石以上あれば線を張る」という人が結構いらっしゃいました。1石は1尺×1尺×1丈(10尺)。1尺が約30㎝なので直径30㎝長さ3mの木を1,000本分くらいの体積です。

前:それなら道をつけて木を出した方が良いのでは?

架線集材には、路網集材*のように作業道を開く必要がないので林床を荒らさない、山の環境にやさしいというメリットがあります。また山の地形に合わせて臨機応変に集材システムを構築できるところも架線の特徴です。ただ1立方mあたりの集材コストは、路網集材で8,000円から1万円。架線集材で1万5,000円、ヘリコプターで3万円。道を付けられるところは付けて、できないところは架線という考え方が今のところ妥当かなと思います。

田中:架線集材はかなり専門的で架設や集材機の操作も難しそうですね

架設には緻密な設計が必要ですが、実際の現場では経験を頼りに張ってしまうケースも多く、事故も発生しています。全長数百m、場合によっては数kmにもなるワイヤーを何本も張る日本の架線集材では、木を吊る人、集材機を操作する人、土場で木を下ろす人がそれぞれ全体を見渡せないなかで、無線で合図を送り合いながら作業をしています。そのため誤操作や合図の聞き間違い、無線の故障などでワイヤーにテンションがかかって切れてしまい、人に当たったり、木が上から落ちてきたりする事故が発生しています。

野田:架線集材の無人化や自動化の技術開発は進んでいないんですか?

日本の架線集材は昭和30年代からあまり変わっていませんが、最近になってようやく技術開発が進められています。搬器にエンジンを搭載した自走式搬器や、無線グラップル操作でUFOキャッチャーのように木を掴んで荷掛け、荷下ろしができる架線式グラップル、油圧制御で無線操作ができる油圧式集材機が開発されて、準備や操作が簡単で安全になりました。

欧米では主索(スカイライン)をドラムに巻いて走行する自走式搬器や、2種類の油圧クランプが操作補助するスナビング式搬器が開発されている為、主索だけ、あるいは主索と走行用の2本だけで架設しています。索張りがシンプルなので事故の確率は低くなり、労働負荷もかなり軽減されます。ただ、それら欧米の搬器は高額であることと、日本の林道や作業道の開設場所の違い(日本は谷筋、欧州は尾根筋が多い)によりあまり普及していないのが現実です。日本の山に適応した架線集材システムの開発が進めば、日本の架線集材も変わっていくのかなと思います。

前:人口減少で木材需要が減るなか、わざわざ木を取らずに残すというのではダメですか?

実際、放置されている山は多くあります。また皆伐して天然林に戻そうという取り組みもあります。集材コストや安全面、さらに倒木や土砂災害のリスクを考えて山を管理できればいいのですが、そのためには素材生産者の人材育成はもちろん、山を持っている人のリテラシーを高める必要があると思います。


索張り*  ワイヤーロープの張り方
路網集材* 伐出用の道をつくって集材する方法

②久住さんの架線教室 掲載号

新林 第7号の表紙

新林 第7号
木はどこからやって来る?

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