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新林
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シリーズ環境に良い紙ってなんだろう?

「環境」に「配慮」するってどういうこと?紙や印刷に携わる人に聞いてみた。

「環境配慮紙ってどんな紙ですか?」平和紙業株式会社の山崎さんに聞いてみた

環境に良い紙ってなんだろう? #2

鮮やかに印刷ができる真っ白な紙、手触りが面白いツルッとした紙、キラキラとした加工がされた紙、などファンシーペーパーと呼ばれる印刷や加工において様々な風合いが表現できる紙があります。『新林』では、ファンシーペーパーの中でも環境配慮型とされる印刷用紙を使ってきましたが、環境配慮型と認定されるにはどのような条件があるのでしょうか?

そこで、紙の商社である平和紙業株式会社の山崎僚子さんに、製紙会社とエンドユーザーを繋ぐ高品質な紙と環境についてお伺いしました。

聞き手:植野聡子(新林編集部・編集者)/村上亜沙美(新林編集部・デザイナー)


平和紙業株式会社
色や風合いを持つ紙であるファンシーペーパーを中心に取り扱う紙商社
https://www.heiwapaper.co.jp/

山崎僚子さんプロフィール
平和紙業株式会社 名古屋支店 販売推進部所属。
主にデザイナー、企業の企画部門へ商品や製品、作品制作のための紙の提案業務を行う。紙営業士の資格を取得。


環境配慮紙は古紙配合から森林認証紙の時代へ

植野 平和紙業さんの新商品のお知らせを見ると、FSC®森林認証紙への切り替え、人体や環境にもやさしい、脱プラといったワードが並んでいますが、環境への配慮についてどのように捉えていますか?

山崎 紙は原料が木で、最終的には土に還る素材なので、紙そのものは環境に良いと捉えて良いと思います。最近は、企業のイメージアップに繋がるような環境配慮に特化した紙や、より一層環境を考えている紙を注文いただくことも多いですね。

村上 環境配慮に特化した紙とは?

山崎 環境配慮型の紙というと、これまでは古紙を配合することが主流でしたが、今は伐ったら植えるという循環を維持することが新しい環境配慮という認識が高まって、FSC®森林認証紙のような商品が増えていますね。過去に、古紙自体が足りなくなってしまって、表記した配合率に満たない製品を作ってしまったという問題※1がありましたが、現在も紙の需要自体が減少していることで古紙も減っています。平和紙業でも古紙配合の紙をたくさん作っていましたが、森林認証紙に切り替わっているものが多いです。古紙に比べて紙の需要に左右されて材料が減る心配がないのは良いことだと思います。

※1古紙配合偽装問題:2008年、製紙各社が再生紙の古紙配合率を基準より下回って偽装していたことが明るみになった。

『新林』第6号に記載したFSC®︎森林認証マーク

植野 環境配慮の考え方が変化してきたんですね。紙の配合が変わることは、紙の品質や風合いに影響はしないのですか?

山崎 例えば、非木材パルプのケナフやバガスを配合した紙がありますが、質感に影響せずに原料を切り替えられます。ケナフは成長が早い植物ですが、品質が安定した原料の確保が困難な状況になり、現在は主にサトウキビの搾りカスであるバガスの配合となっています。風合いの良い紙もFSC®森林認証紙に切り替えているものがたくさんあって、環境に配慮する原料の紙であっても風合いが落ちるわけではありません。

ファンシーペーパーならではの取り組み

村上 環境への配慮を示すマークがたくさんありますが、他にはどんなマークがありますか?

山崎 変わったマークだと、過去には新シリアルペーパーという商品がありました。未利用穀物繊維をパルプに混ぜ上手に活用した紙です。現在、新シリアルペーパーは常備在庫販売を終了していますが、小豆殻を利用した紙が商品になっています。非木材を使った紙に特別なマークはありませんが、平和紙業取扱いの全ての環境配慮型の紙にはエコロジーペーパーマークが付いています。

植野 紙に穀物が入っているのは珍しくて話題になりそうですね。穀物を使った商品のパッケージやラベルに良さそうです。

山崎 面白い事例で言うと、名古屋のういろう屋さんがういろうの端といった製品にできない部分を混ぜ込んだ「ういろうペーパー」という紙を作って、パッケージなどに利用しています。こう言った紙は混抄紙(こんしょうし)と言います。混抄紙の中には、食品や繊維のメーカー様が生産時にどうしても出てしまう切れ端や残渣(ざんさ)といった様々な素材を紙の原料であるパルプに混ぜ込んでつくる紙もあります。過去には商品としてシリアルやジーンズ等の混ぜ物のある銘柄もあり、一時期とても流行ったようですが、特徴が出すぎて用途が限定的になったり印刷の際に柄が目立ちすぎたりと使用には難しいこともあったためか廃盤となってしまいました。生産量と原料とのバランスにより安定生産は難しいので、現在は別注オーダーになるケースが多い紙の種類となります。

ういろうの廃棄物を混ぜて作った「ういろペーパー」透け感のある部分がういろう、茶色や黄色の部分が小豆や栗
「ういろペーパー」を使ったパッケージ

植野 古紙もそうですが、リサイクルする原料を安定供給できるか、そして作った紙に安定的な需要があるか、というバランスが難しいんですね。

山崎 そうですね。例えば、Mag-Nという雑誌古紙を配合した紙があって、グレーの風合いが人気な商品なのですが、雑誌の需要が減ると配合する雑誌古紙がなくなり廃盤の危機になってしまうかもしれません。

村上 人気の紙なのに原料の雑誌が足りないのはなんとも残念な気持ちになります。Mag-Nは、新林3号で古紙が30%以上配合されたMagカラーN(テラコッタ)を使いました。

『新林』第3号 印刷用紙には「Mag カラーN」を使用した

環境配慮マークをつける意味

植野 新林3号にはエコロジーペーパーマークをつけたのですが、先ほど、平和紙業さんが取り扱う環境配慮型の紙には全てこのマークが付いていると伺いましたが、具体的にはどんな意味があるのですか?

山崎 エコロジーペーパーは弊社オリジナルのマークで、特定の原材料によらず、環境配慮型のパルプを10%以上配合した商品につけています。また、マークごとに規定があって、先ほど話題にあがった森林認証には、製紙会社はもちろん、私たちのような紙の代理店、印刷会社など、紙づくりから本やパッケージといった形になるまでの工程に関わる全ての企業が認証を取得している必要があるとても厳しい認証です。

村上 以前、新林でFSC®︎森林認証マークをつけるときに、申請書の発行がすごく大変でした…

山崎 そうですよね。それだけ各工程に携わる人が責任を持って管理しているということですので、より一層、環境配慮をPRできたり信頼度が高くなるのだと思います。こういった背景を知っていると、FSC®︎森林認証マークが付いている製品の苦労が想像できて、グッときますよね。

植野 たしかにマークの意味をきちん知ると、そこから想像できるものがたくさんありますね。

おすすめのファンシーペーパー

村上 環境に配慮した紙でおすすめはありますか?

山崎 「A-プラン」は風合いも人気のある使いやすい紙です。こちらは、バガス配合から順次FSC®森林認証紙に切り替わっています。「グラフィーCoC」はグリーン購入法適合銘柄※2で、ナチュラルGSとパールホワイトGSは古紙配合率65%FSC認証パルプ35%、クリスタルホワイトとホワイトは古紙配合率10%FSC認証パルプ90%とエコ比率がかなり高いです。

※2グリーン購入法適合銘柄:国等の公的機関が率先して環境負荷低減に資する製品やサービスの調達を推進し、環境に良い物品の需要を促すのがグリーン購入法。紙類には、原料の持続可能性が担保されたもの、塗工量など適合銘柄になるための判断基準がある。

山崎さんに紹介された「キュリアスマターN」 食品生産工程で排出されるジャガイモのデンプン成分を顔料とともに紙面にコーティングし、不思議な触感を実現したユニークな紙

村上 そういえば最近は、気に入って使っていた紙が廃盤になって使えなくなってしまった、ということが多々あります。

山崎 最近では廃盤やリニューアル品に変更になる紙も多いです。需要やコストの問題もありますし、機械が古くなって製造ができなくなってしまったり、先ほど言ったような原料が安定供給されなくなったりなど理由はいくつかあります。

植野 需要はあっても廃盤になってしまうこともあるのですね。紙を購入する側も商品の原料や製造する機械、また誰が作っているのかよく知ることで、例えば新しい機械を買うためのクラファンが立ち上がるといった、人気の紙を応援ができる動きに繋がったら良いなと思いました。

村上 農産物のように旬があって、紙の生産が多い時期や少ない時期など背景を知ることができたら、「今は旬のこの紙を使おう!」という紙の選び方ができそうで面白そうです。

山崎 たしかに商品が生産される背景を伝えていくのもこれから重要になっていきそうです。

植野 ファンシーペーパーという特殊な紙だからこそ、生産物の原料の残渣を使った紙があったりと、原料の多様さがあることに魅力を感じます。また同じ商品でもパルプがFSC認証パルプへ移行していたりと、日々、環境配慮に向けた取り組みがされており、『新林』というメディアも、紙の生産背景を伝えていく一助になれたらと思います。今日はありがとうございました!

(取材日:2025年4月30日)

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