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シリーズ山に生きる。— 西川町の知恵と術 —

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出羽三山信仰と月山の山菜料理(後編) / 志田靖彦さん・英子さん

山に生きる。— 西川町の知恵と術 —④

左から シドケ ハンゴンソウ アオコゴミ アカコゴミ

四季折々の月山の恵み

左からコシアブラ、ウルイ(ギボウシ)、タラノメ

英子さん「山菜は独特の香りやほろ苦さが特徴ですが、ウルイは山菜にしては苦味がなくあっさりしているので、お漬物や煮物でもおいしいです。タラノメは天ぷらにするのが一番。シドケは山菜らしい独特のきどさ(苦味・えぐみ)があります。ハンゴンソウはちょっと珍しい山菜ですよ」

志田英子さん

靖彦さん「茎の色が赤いのはアカコゴミ。緑色が混じっているのはアカコゴミのオスの株です。それとは別に、アオコゴミもあります。アカコゴミのオスは茎に毛が生えているので、アオコゴミと見分けがつきます」

アカコゴミのメスとオス
アオコゴミ

英子さん「今はまだ旬の『走り』。これから5月の末ぐらいまでが山菜が沢山揃う時期だと思います。山菜が旬の『名残り』を迎える頃、今度はガッサンダケ(月山筍/別名:根曲がり竹)が出てきます。ただここは雪が多い地域でしょう。夏でも上に行けば春のものが収穫できますが、山の上は秋も早いので、春と夏と秋が混在する時期があります。山の夏は一瞬ですね。秋になると紅葉が上からずっと降りてきて、今度はキノコを収穫します。山でも森林限界になるほど上の方はキノコが採れませんが、ブナ林に出るキノコは意外と種類がありますよ。かえって、土に出るマツタケやシメジなどは、マツ自体が少ないのであまり採れません」

冬を越すための山菜料理

志田靖彦さん
おいしさに感動した塩漬けウドのおひたし

靖彦さん「山菜は素材に適したいろいろな保存の仕方がありますが、塩蔵(塩漬け)が多いですね。その中でもウドは塩蔵(えんぞう)することで、よりおいしくなる山菜だと思います。ワラビ、オゾ(コゴミ)、アザミ、フキなども塩蔵することが多いです 」

ウドの塩漬け

靖彦さん「塩漬けのウドはを食べる時は、一度土鍋で茹でて一昼夜流水にさらして塩を抜きます。塩漬けにすると茶色に変色しますが、塩抜きをすることできれいな緑色が復活します」

ワラビの塩漬け

靖彦さん「塩漬けワラビは、沸騰したお湯に入れてお湯が冷めるまで置いてから、流水で一昼夜かけて塩抜きします。塩漬けの時は真っ黒ですが、これも塩抜きすると色はだいぶ薄くなります。アザミは棘があるので、塩蔵にする前に、棘の部分を取って下処理をしてから漬けます。その分手間はかかります。ワラビもアザミも塩漬けはだいたい煮物にします」

干しアカコゴミ
干しカタクリ

英子さん「アカコゴミ、カタクリ、ゼンマイは、さっと茹でてから乾燥させます。アカコゴミは干すとこんなに細くなります。茹でたものをそのまま乾燥させると、ピンとまっすぐになって折れやすくなるので、少し揉んで乾燥させます。そうすると絡んで折れにくくなります。じつはこの手作業が大変で、特にゼンマイは手揉みの技術を持った人が少なくなり、値段も高くなりました」

干しワラビ

英子さん「これはゼンマイに見えますが、ワラビです。ワラビを塩漬けにして、夏の天日で揉みながら干したものです。ワラビの塩蔵は各地で行われていますが、さらに干すというのは他県では見ない保存方法かもしれません。干すと食感が柔らかくなり、旨味も凝縮します」

サワモダシの塩漬け

靖彦さん「これはサワモダシというキノコで、シャキシャキとした歯応えがあります。キノコの塩蔵は、1対1か、塩の方が多いくらいの割合で塩を使います。そうしないと腐ってしまうので、この辺では塩をケチってキノコを腐らせると、バカにされますよ」

英子さん「ガッサンダケ(月山筍/別名:根曲り竹)とモウソウチクの筍は瓶詰めにすると、汁までおいしくいただけます。ガッサンダケは畑でも栽培していますが、これは天然です。うちのお父さんが採ってくる筍はすごくおいしいですよ。山菜のアク抜きや保存食は確かに手間がかかりますが、慣れると案外出来てしまうもの。雪国は冬に何も採れないので、昔の人は、春も秋も食材を採っては、保存方法を考えたのでしょうね。うちでは冬の山菜料理が一番手間がかかっていると思います。そこが知恵ですよね。先人の知恵って大したものだと思います」

志田靖彦さん・英子さんご夫婦

靖彦さん「西川町には、山菜採り名人は沢山いますし、山菜のシーズンには他県からも大勢の人が山菜を採りに来ます。ただ最近では、家の人に『天ぷらにできる山菜しか採ってこないでね』と言われてしまうそうです。山菜は下処理に一手間も二手間もかかりますから、慣れていない人には大変なのだと思います。うちのお客様の中には、『昔、家で食べていた懐かしい山菜料理が食べたい』と、来てくださる方もいらっしゃいますよ」



執筆者
神尾 知里
兵庫県出身。浜松市在住。新林編集部ライターとして2020年より活動を開始。全国の林業地や森林文化、企業の森などを取材する。

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