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新林
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シリーズ今、木を伐る理由① 地域経済と生業

森林資源に新たな価値を創造し、地域経済を守る取り組みとは?

子どもたちに森林を残すために 株式会社 木の里工房 木薫/代表 國里哲也さん

西粟倉の人たち②

2006年、西粟倉村の元森林組合職員の人たちによって村内初のベンチャー企業「木の里工房 木薫(もっくん)」が設立された。メンバー6人、資本金10万円でスタートした小さな家具工房の活動は、のちの「百年の森林構想」につながるエポックメイキングとなった。全国でも珍しい「林業」と「家具制作・販売」を一貫して行う木薫さんが誕生した頃の、西粟倉村の夜明けのお話。

株式会社 木の里工房 木薫

2006年に西粟倉村初のベンチャー企業として設立。『森から子どもの笑顔まで』の起業理念を掲げ、森林整備・木製家具・保育施設運営を行う。


起業前から森林整備に取り組まれていたのですか?

僕は西粟倉の出身で、起業する前は地元で森林組合の職員をしていました。僕が入社した頃は、村内の就職先は限られていましたし、国産材の価格が今以上に低迷している時期で、僕自身も林業に関心があるわけでもなかったんです。転機は入社4年目の時ですね。林業一筋の山主さんから「木材の値段を上げるにはどうしたらいいか」と相談を受けて、何も考えず「無理じゃないですか」と即答してしまったんです。がっくりと肩を落とした山主さんの姿をみて自分を恥じ、それから木の価値を上げるにはどうしたらいいか真剣に考えるようになりました。

木材の価値を上げる具体的な方法とは?

当時、原木は市場に出して買い手が値段を決めるのが一般的で、国産材の値段は安い輸入材に押されて下がるばかり。木を売っても山主に利益が残らないので間伐費用を捻出できずに山は放置されていました。木の値段を上げるにはまず自分たちで値段を決定できるようにならないとダメなんですよ。野菜は市場で売られていますが、その野菜を店で料理にしたら自分で値段を付けられますよね。木製品にしたら自分で値段を付けられるし、木の良さを伝えるためにも、エンドユーザーの関心が高い木製品にした状態で伝える方が有効なんじゃないか。そんなことを仲間と話し合っていたのが木薫の活動の原点ですね。

いつ起業しましたか?

じつは当初起業するつもりはなく、家具制作は当初森林組合による林業の啓蒙活動として想定していたものなんです。僕の発案は当時の森林組合としては相当ぶっ飛んでいましたが、企画書を作って提出してみたら、面白そうだからやってみろと承認をいただけたんですね。そこからは順調に話が進み、家具制作のための準備を着々と進めていました。ところがそのタイミングで市町村合併の話が持ち上がり、行政の合併協議会が始まったと同時に森林組合の合併協議会も立ち上がったんです。結局西粟倉村は合併しませんでしたが、西粟倉村の森林組合は合併する道を選びました。それが2006年の4月です。森林組合が広域合併すると運営方針も変わってしまい、僕の企画書も却下されてしまいました。でも僕自身の気持ちはもう後戻りできないところまできていたので、合併から3ヶ月後の6月に退職して、同じ森林組合出身の仲間と一緒に独立し、7月から木薫をスタートさせました。

木薫が始めた事業とは?

木薫では、山主さんの山を5年契約でお預かりし、山から出した木材で木製品を制作、売上を山主に還元する仕組みを考案しました。こうすることで、山主さんは間伐に費用がかからないばかりか、収入も得られるようになります。それならばと、山主さんからお声がかかるようになり、木薫でお預かりする山が増えていきました。私たちはその間伐材を使って製品を作り、付加価値をつけることで、自分たちで値段を付けて販売することができました。

木薫ではどのような木製品を制作していますか?

木薫では、保育園や幼稚園などで使う保育家具や遊具を専門に制作しています。本物の無垢材を使った家具は、保育園の現場と親和性が高く、木に備わっている自然素材の優しさや温もりは、先生方に多くを語らずとも、すぐに感じ取ってくれます。それが木という素材が持つ力なのかもしれませんね。ただ、僕たちも最初は熱意があるだけで保育に適した家具デザインのノウハウがあるわけではなかったので、現場の先生方と何度も打ち合わせを重ね、子どもたちの安全性や先生方の利便性を形にする努力をしました。そうしたものづくりの姿勢が保育園や幼稚園の先生方の間で広まり、徐々に仕事をいただけるようになりました。

木薫が制作した保育家具 

百年の森林構想の取り組みで木薫さんにはどのような変化がありましたか?

仕事が軌道に乗ると、今度は僕たちだけで山をお預かりするのが厳しくなってきました。ちょうどその頃、木薫の取り組みは面白いから、もっと広範囲で森林整備を進めて、間伐材を使ったものづくりを村ぐるみでやらないかという話になったんですね。それが「百年の森林構想」です。実際、村の山を守り育てるなんて、誰か1人で成し遂げられるものではないですよね。村全体で取り組めるのであれば、とても良いことだと思ったので、山の集約化は村にお任せし、森林整備と家具制作に専念することになりました。大事なのは、村のみんなが同じ課題認識を持っていること。それがあるから一緒にやっていけるんじゃないですか。

(2023年1月19日zoom取材)

写真提供:木の里工房 木薫

子どもたちに森林を残すために 株式会社 木の里工房 木薫/代表 國里哲也さん 掲載号

新林 第6号の表紙

新林 第6号
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シリーズ今、木を伐る理由① 地域経済と生業

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