メイン コンテンツにスキップ
新林
山に生きる。— 西川町の知恵と術 —の関連画像

シリーズ山に生きる。— 西川町の知恵と術 —

山形県のほぼ中央に位置する西川町は、南に朝日連峰、北に出羽三山を望み、山岳信仰やマタギ文化、山菜料理、つる細工など、山に …

マタギ文化と大井沢の暮らし/金子利光さん

山に生きる。— 西川町の知恵と術 —②

金子利光さん

日常で使う生活用具

金子さんが制作した〈山葡萄つる細工〉

雪国の暮らしと手しごと

朝日連峰と大井沢地区

「大井沢は町内でも雪が多い上に、小学5年頃までは除雪車も通らなかったので、冬は電線を跨げるほど雪が積もっていました。毎朝母親たちが当番でかんじきを履いて学校まで子ども達を引率し、雪道を踏み固めてくれた後ろを歩いた記憶があります。下校時は、帰り道が分かるように、雪道に目印の茅が数mおきに刺してありました。

冬は父親が出稼ぎでいなくなるので、家を預かる母親と祖父母が冬の内職として籠をせっせと編んでいたものです。今ならプラスチックの安い籠が売っていますが、そもそもお金を出して何かを買うという発想がなかったので、山菜でも何でも山から採って自分たちでつくっていました」

地区対抗フキ採り競争

両手を左右に水平に大きく広げた時の長さを指す伝統的な長さの単位「一尋(いちひろ)」

「昔の大井沢は貧しかったので、学用品もまともに買えませんでした。そこで、小学4年生になると、学校の冬休みの宿題として雪囲いで使う縄を編まされましたよ。学校に提出する縄の長さは、両手を広げた長さを一尋(いちひろ)と数えて、私の記憶では、4年生なら十尋、5年生は十五尋、6年生は二十尋という具合に決められていたと思います。昔の話ですから正確な長さは定かではありませんが、どちらにしてもこのような宿題は、同じ西川町でも下の町(町の中心地)では考えられないことです。大井沢でも私たちがギリギリ経験した世代だと思いますよ」

「月山湖売店」で販売している山葡萄ジュース

「春は授業の一環としてフキ採りをしました。大井沢には9つの部落があり、部落ごとの対抗で何kgのフキを採れるかを競いました。秋はヤマブドウです。採ってきたブドウは体育館でビニールシートの上に広げられ、学年ごとに作業時間を割り振られて、房から粒を取る作業をします。ブドウの加工場がちゃんとあり、そこで絞って瓶詰・滅菌をして売っていました。それらを売ったお金で学用品を揃えていたのです」

大井沢小中学校の自然研究活動

獣類班(資料提供:大井沢自然と匠館)
鳥類班 (資料提供:大井沢自然と匠館)

「大井沢は子どもが少ないので、団体競技のスポーツはダメなんですよ。そのかわり、学校教育の一環として自然研究活動に力を入れていました。生徒たちは、 自分が研究したいテーマの班に分かれて、先生や地域の人たちの手を借りながら、動物の飼育や山での観察・採集、剥製や標本づくりなどをしていました。当時の活動の資料や生徒たちがつくった剥製は、現在も〈大井沢自然と匠館〉に展示されていますよ」

「クマ狩り」で山を覚える

「やっぱり、クマ狩りをやっていたことが大きいですね。狩猟免許を取って猟友会に入ったのが23、4歳だったと思います。大井沢では、獲物を取り囲んで捕獲する『巻き狩り』と呼ばれる猟法で狩りをします」

クマ狩り図解 自然研究活動の資料(資料提供:大井沢自然と匠館)

朝5時に猟を始めたとすると、昼ぐらいにはクマを巻き込み(取り囲み)ます。その間、セコは山をいくつも越えて、朝日連峰の内側を何時間も駆けずり回り、クマを上へ上へと追いやります。マエカタさん以外はクマがどこにいるのか見えないので、トランシーバーからの指示に従ってクマを巻いていきます。その時、自分がどこに居るのか分からないのでは話になりません。追いやられたクマはどんどん山を登っていき、最後には頂上にいる射手に射止められます」

クマ狩り(資料提供:大井沢自然と匠館)

「こんな方法で猟をしていたので嫌でも山を覚えますし、覚えていないとクマ狩りに連れて行ってもらえません。山菜採りのように沢沿いだけでは終わらないのがクマ狩りなんです」

残して守る「採集文化」

「昔は山菜蕎麦に使う山菜やガッサンダケ(月山筍/別名:根曲り筍)も、自分で採りに行っていましたが、足腰が弱ってしまったので今は行きません。それでもヤマブドウのツルだけは自分で採りに行きます。私が採りに行く場合は、だいたい10箇所くらいの決まったポイントを回ります。採るのは樹齢20年〜30年、直径5cm程度のツルだけ。地面から切らずに50cm上から切れば、根っこはまだ生きていますから、またそこから伸びます。鳥が実を食べて落とした糞からつるが成長するのを待っていたら時間がかかりますからね。それは山菜や筍も一緒ですよ。それを理解していない他所から来た人は、根こそぎ採ってしまう」

「親から口酸っぱく言われてきたのは、採りきらないということ。例えばゼンマイは、メスとオスがあり、ほとんどの人はメスだけ採ってオスだけ残していきます。本来はオスだけ残すのではなく、メスも10本生えていたら、1、2本は必ず残さないといけません。他にも赤ミズってわかりますか?学名がウワバミソウという山菜ですが、これは『抜かずに鎌で刈れ』と教えられました。そうすると次の年にまた採れるのですが、子どもの頃は知らずに抜いてよく怒らたものです。

今のようにお金を出せば食べ物を買えるという時代ではなかったですから、山菜も春に頑張って採ったものを塩蔵して冬に食べる保存食にしたわけです。でもそれは、今年だけ採れたらいいというものではありません。次の年の分も残さないと来年食べるものが無くなってしまいます。来年も再来年も、この先ずっと採れるように残しておくということが大事なんです」

西川町立大井沢小中学校 自然研究活動 五訓(資料提供:大井沢自然と匠館)


シリーズ山に生きる。— 西川町の知恵と術 —

山に生きる。— 西川町の知恵と術 —の関連画像

山に生きる。— 西川町の知恵と術 —

山形県のほぼ中央に位置する西川町は、南に朝日連峰、北に出羽三山を望み、山岳信仰やマタギ文化、山菜料理、つる細工など、山に …

new forestory

山に生きる。— 西川町の知恵と術 —の続きを読む
山と手しごと/KOGUMA 伊東 広さんの関連画像

山と手しごと/KOGUMA 伊東 広さん

[山に生きる。— 西川町の知恵と術 —①] 山葡萄つるかごで有名な山形県西川町の大井沢地区で、つる細工職人の伊東広さんに、雪国の暮らしの中にある手しごとの魅力についてお話をききました。

new forestory

山と手しごと/KOGUMA 伊東 広さんの続きを読む

関連記事

山暮らしの道具   KISSA山ノ舎  中谷明史さんの関連画像

山暮らしの道具 KISSA山ノ舎 中谷明史さん

[森林の資源をつかってみる〈インタビュー〉 #2] 山の暮らしは楽しい?大変?家族で山へ移住した中谷さんの暮らしと、山の必需品について聞いてみました。

new forestory

山暮らしの道具 KISSA山ノ舎 中谷明史さんの続きを読む
森とケモノの関連画像

森とケモノ

森でケモノに出会ったら、どのようにしたら良いでしょうか。木こりの前田さんに教えてもらいました。 クマ 背中を見せて逃げる …

森と〇〇

森とケモノの続きを読む
ページの先頭へ戻るCopyright © Nikken Sekkei Construction Management, Inc.
All Rights Reserved.