新林 第1号
特集 天竜の森で木を伐ってみる
なぜ、今、木を伐るのか
国土の約7割が森林で、うちの約5割が人工林という環境の中で、私たちは、どうこの人工林に、目を向ければ良いのでしょうか。語源をたどると、「森」は人の手がはいっていない場所、「林」は人の手が入った場所のことを指すことを知りました。つまり人工林は「森」ではなく、文字通り「林」なのです。
現在、私たちが目にする人工林の多くは、1960年代の拡大造林政策により、人の手によって、成長の早い杉・檜などの針葉樹を、単一植生で、密に植えたものです。植林から約60年が過ぎ、適切な間伐等の管理が、人の手によって行われていなければ、過密化して地表に光が射さず、生物多様性に乏しい、自然偏移が起こらない林として、存在することになります。また拡大造林期には、急峻な地形にも植林がされており、公益的な機能を担わず、災害リスクを内在する状況もあります。
木質資源の利用により解決ができること、できないこと
気候変動対応の流れにおけるローカーボンな社会の実現を考えた時に、森林の適正な管理は、生物学的炭素固定法として一定の効果があるとされています。拡大造林政策が当初に意図されていた建材等での利用拡大模索が一段と進んでおり、現在より木質資源の利用は、進むと考えられます。
ただし、政策によって拡大されたす広大な人工林を一括りとしての対応することは難しいと考えられます。例えば、人工林の中でも管理・搬出に費用面で負担が大きいエリアは必然的に競争力が落ちてしまいます。このため木質資源を利用するという人工林という視点から、別視点へ価値基準をずらす必要があります。この中には、自然偏移が可能な状態まで、人の手をいれ、以降は自然の力に委ねる、サステナブルな保全林化の取り組みなども含まれます。
木こりに学び、木こりと考える
今回の特集では、静岡県浜松市において、実体験として、木を伐ることの課題に迫る企画を行いました。日々、人工林と向き合い、活動する一次側としての木こり・前田さんに指導を頂いた様子をレポートしております。併せて、日本の森林の歴史を簡単にご紹介しています。人によって乱伐と人工造林が繰り返されてきた、大まかな歴史の流れもご理解頂けると思います。
地域によって人工林の事情も、課題も、担い手も、多様ではありますが、サステナブルな社会の実現を考え、小さな実践を行おうとした際に、ひとつの企業の枠を超えた一助になればと思います。
サステナビリティ推進室 吉岡優一
【紙と製本のこと】
1号の冊子では、間伐材を有効活用した紙である「フォレスタCoC」を使用しました。製本には、用紙を二つ折りにして順番に重ねただけの「スクラム製本(綴じ無し製本)」と呼ばれる製本方法を採用しています。綴じに針金を使わないため、リサイクルにも適しています。
詳細はこちらをご覧ください。
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