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シリーズちぐさ研究室の研究日誌

岡山県・西粟倉村で活動中の「ちぐさ研究室」によるちょっと本格的な実験や観察の数々

巨人の肩の上で「論文」を読んでみよう ①生物視点の建築について知りたい

ちぐさ研究室の研究日誌 #4

岡山県・西粟倉村で活動する「ちぐさ研究室」のお二人と、季節ごとに実験や観察を楽しむ連載。
第四回の今回は、論文の読み方について4回に分けて紹介していきます。
▶︎①生物視点の建築について知りたい
▷②生物×建築?一体何から調べたらいいのやら…
▷③建築学の論文を生物学視点で読んでみる
▷④秋山さんを交えてディスカッション
○登場人物:川上えりか、清水美波(ちぐさ研究室) 植野聡子(新林編集部) ゲスト:秋山淳

研究の足跡「論文」を読んでみませんか

ーー ちぐさ研究室の川上さん、清水さん、こんにちは!暑かった夏がようやく終わりましたね。今年の夏はいかがでしたか?

川上 今年も暑い毎日でした!8月には去年に引き続き昆虫採集イベントも開催し、夏の虫をたくさん観察しましたよ。お盆を過ぎたあたりからは、朝晩がかなり涼しくなってきています。

ーー お二人は学生の頃は自由研究をやりましたか?

清水 やりましたね~。「消しゴムはなぜ消えるのか」をテーマに、消しゴムの歴史とか原理を調べたりとか、「蚊」をテーマに、家族の中で刺されやすい人や時間帯のタイプを調べたりしたことが印象に残っています。いつも、取り掛かるのがギリギリ過ぎて家族に怒られていましたが、、、。

ーー さすが目の付け所が面白いですね!これまで取り上げた虫の捕まえ方や雑草調査も自由研究の題材になりそうですよね。近頃は、虫の捕まえ方を検索して新林のページに辿り着いてくださる方も多いんですよ。

川上 それは嬉しいですね!暑い時期は生きものも一年で一番活発な季節ですが、今回はあえて屋内で「研究の足跡」にどっぷりつかってみませんか?

ーー 研究の足跡ですか?

清水 そうです!研究の足跡とは、つまり「論文」のことなのですが、文字の誕生以来、ありとあらゆる分野の研究は「論文」として残されています。論文とは、あるテーマに関する事象を調べるために客観的なデータや資料を集め、それらを分析・考察した結果に基づき、自分の意見をまとめた文章のことです。「研究」「論文」と聞くととっつきにくく感じるかもしれませんが、実は身近なことを取り扱ったものも多くあり、その着目点や取り扱っている内容の広さに驚くこと間違いありません。

ーー 確かに。新林編集部でも「新林ゼミ」というのを開いて、気になったテーマの論文を持ち寄ってあれこれ話してみました。用語や図表が専門性が高く複雑で読み込めない部分もあったのすが、森林の分野だけでもいろんな研究をしている人がいるんだなぁ〜と、素人ながら思いました。


身近なことも論文がある?興味のテーマを検索してみよう

ーー 先ほど「論文には身近なことを取り扱ったものも多くある」と仰っていましたが、どんなものがありますか?

川上 そうですね…..例えば、編集部さんが今気になっていること、何か教えてくれませんか?

ーー 気になっていること?唐突ですね…、そういえばこの前、新林の編集会議で「戦隊ヒーロー」の話題が出たんですよね。ひょっとして戦隊モノの論文ってありますか?

清水 戦隊モノ!いいですね。戦隊モノには色が割り当てられていることが多いので、「戦隊 色」で調べて何かヒットするか見てみましょう。

川上 「スーパー戦隊ヒーロー・ヒロインのキャラクター印象に及ぼす色情報の効果」「『プリキュア』 に見る髪色とキャラクタ ー の特徴の関連性」「スーパー戦隊シリーズにおける 「正義」 と 「悪」 の変遷」など、色んな角度から戦隊と色を研究した論文が並んでいます!

ーー へぇ〜!どの研究もどういうこと?と気になるタイトルですね。こんなとっつきやすい題材にまで研究や論文があるとは驚きました!

清水 このように、ちょっと気になることや少しニッチなことでも、論文があると一気に興味の深堀をすすめられます。

ーー 今、検索で使ったサイトは、普通の検索サイトではなかったように思うのですが、何というのですか?

川上 これは、「Google Scholar」という検索エンジンです!全世界の学術専門誌、論文、書籍、要約など、さまざまな分野の学術資料を検索することができます。「巨人の肩の上に立つ」と書いてあるように、先人たちの研究成果が無限に蓄積されているのです。

ーー 「巨人の肩の上に立つ」!頼もしくて視界が開けてきそうなスローガンですね。さっそく検索して論文を読んでみたいですが、何か良いお題があるといいですね。

清水 そこで、今回はちぐさ研究室の仲間である秋山さんに来ていただきました!秋山さんは、生きものに関して勉強している中で、何やらちょっと困っている(?)ことがあるそうで……

秋山 こんにちは、秋山淳です。普段は一財)西粟倉むらまるごと研究所を運営しコミュニティのコーディネートを行なうほか、建築士として地域の居場所づくりや空間設計を行なっています。ちぐさ研究室には、活動中の写真撮影や標本づくりで関わっています。

ーー こんにちは!いつも素敵な写真でお世話になっています。今日はよろしくお願いします。本業は建築士さんだったんですね。

川上 秋山さんは、今どんなことが気になっていて、何に困っているのか教えてもらえますか?

秋山 はい、実は最近村内のとある小屋を使えることになったんです。以前の山の所有者さんが物置として使用していた小屋のようで、沢のすぐそばにあり、小屋の裏手はススキやキイチゴ類が広がる小さな草原になっています。

秋山 僕は建築を考える時「人の居場所である空間が、生き物がいる自然を『間借り』しているとしたら、どんな建築になるだろう?」というようなことを考えています。今回もそういった生物視点の空間を作りたいなと思っています。

清水 生物視点の空間とは面白いですね。生物がいる自然を『間借りする』建築という発想はどこから来たのですか?

秋山 古来、日本では住宅に茅葺や土壁など自然由来の素材が使われてきましたが、現代の住宅ではコンクリートやガラスなど自然には分解されない材料も多く使われていて、これからはサステナブルな環境のためにも自然由来の建材の価値の見直しが必要なんじゃないかと思っています。とはいえ、それはまだ人間的な視点で、もっと自然側に立つと、そもそも「生物の住処になるかどうか」という視点から建築を評価してみたり、評価の基準があってもいいのではないかと思います。

川上 なるほど、生物の住処というと、シロアリなど害虫としての生きものと建築の関係はフォーカスされることがあるかもしれませんが、生きものの住処としての建物や自然に還る前提としての建築物については資料が少ないかもしれないですね。

ーー ツバメの巣ができやすいお家とそうでないお家がありますが、それも建築の違いが関係していたりするのでしょうか?

秋山 確かに関係しているかもしれません。それと、生物視点の空間作りをするには、その空間を作り維持していくためのコミュニティが必要になると考えています。人のネットワークやコミュニティが中心にあって、そこから建築と生物の狭間を見たいと思っています。なので「あるエリアにおける生物多様性の視点から見た建築の存在価値を探る」こと、その上で、「対象の小屋についてどんな要素・環境を調査・把握・整備していかないといけないかという全体像を掴む」という点について、知りたいなと思っています。

ーー 生き物にとって価値がある建築とは?そんな建築にするためにしなければいけない調査方法や環境整備とは?ということを知りたいということですよね。これはなかなか難題ですね。

清水 そうですね、論文は「書いた人独自の新しい見解・内容」が記載されていることが重要です。そのため一般に販売されている書籍では取り扱っていないニッチな内容でも、論文で探せば見つかることがあります。次回から、秋山さんのお困りごとの助けになるような論文を探していきましょう!

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