身近なもので骨格標本を作ってみよう! ②早速骨にしてみよう!
ちぐさ研究室の研究日誌 #6
岡山県・西粟倉村で活動する「ちぐさ研究室」のお二人と、季節ごとに実験や観察を楽しむ連載。
第6回の今回のテーマは「骨格標本」
身近なものと道具で骨格標本をつくってみましょう!
▷①骨格標本って作れるの?
▶︎②早速骨にしてみよう!
▷③組み立てて観察しよう!
○登場人物:川上えりか、清水美波(ちぐさ研究室) 植野聡子(新林編集部)
ーー さて、道具の準備ができましたが、どのように骨にしていくのですか?
肉を取り除いていこう
清水 まずはメスやハサミなどの刃物、ピンセットを使って、手で取れる範囲でひたすら肉を削いでいきます。肉を引っ張りながら、骨からはがすようにして刃を細かく動かします。関節部分は筋や腱を切りながら刃を差し込める隙間から少しずつ外します。ネズミやスズメなどのサイズの場合は骨がバラバラになると大変なので、じん帯を残して骨同士をつなげたままにした方が楽です。
清水 骨が見えてある程度肉を削ぎ落すことが出来ました。
川上 さらに除肉を進めます。今回は煮込む方法で残った肉を取り除くことにします。除肉にはほかにもたんぱく質を溶かす酵素を含む入れ歯洗浄剤を使ったり、屋外で水に入れて放置したり、虫に食べさせたりという方法を使うことが多いですが、それぞれにメリットデメリットがあります。気になる方は「骨格標本 除肉」で調べてみてくださいね。
ーー 手羽先の場合は、調理して食べて骨にするというやり方もありですか…?
川上 そのやり方もお手軽で、ありですね。ただ、調理中に油がしみ込んでしまったり、骨が熱で傷んでしまう可能性があります。長く保管できる標本を作りたい場合には、避けた方がいいかもしれないですね。
清水 鍋で煮込む前に、パーツがごちゃごちゃにならないように袋分けします。今回は「一手羽」単位で製作しているので必ずしも必要ではないですが、例えば左右一対のパーツや、手の指が何本もあったりする場合は、混ぜるとどれがどこの骨か分からなくなってしまうので、除肉する際に容器に分けます。今回はお茶パックを使用し、製作者ごとに牛乳パックと油性ペン、タコひもを使ってラベル付けしました。骨の大きさによってはもう少し大きな袋を使ったり、鍋を分けて煮込んだりといった方法でも対応できます。
ーー とにかく骨がバラバラにならないように注意が必要なんですね。複数人で作業するときは作業者の名前をラベルしておくと良いですね。
川上 いよいよ煮込みます。特に小さな骨は傷みやすいので、弱火でじっくり煮込んでいきます。肉がするりと骨から外れる柔らかさになればOK。

川上 柔らかく骨から取り外しやすくなった肉を、さらにピンセットで取り除いていきます。

ーー 細かい作業ですね!肉はどれくらいまで除去したら良いですか?
川上 長期保存を目的とする場合は、肉の部分が残っていると腐敗の原因になります。筋張っていてピンセットで引っ張っても取れない部分はハサミで切り取るなどして、骨だけになるまで、可能な限り除去した方が良いですね。
清水 ちなみに入れ歯洗浄剤で除肉をする場合は、このように瓶に骨と洗浄剤タブレットを入れて肉が半透明になるまで放置し、柔らかくなった肉をピンセットで取り除きます。

川上 今回は標本の長期的な保管を目的としなかったため行いませんでしたが、骨の中に含まれている脂が時間とともに染み出てカビや虫の発生の原因になってしまうため、脱脂を行う必要があります。脱脂はアセトンに浸けて行いますが、私たちはアセトンを含むマニキュアの除光液を使うことが多いです。ふたが閉まるガラス製の容器に骨が浸かる深さまでアセトンを入れ、揮発性、可燃性があるため風通しのいい場所で2週間ほど放置します。

清水 これで素材となる骨の下準備が整いました。それではいよいよ組み立てていきましょう!
シリーズちぐさ研究室の研究日誌

ちぐさ研究室の研究日誌
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