まだ見ぬ生きものを求めて!土の中を観察してみる ③土壌動物はどこにいる?
ちぐさ研究室の研究日誌 #2
岡山県・西粟倉村で活動する「ちぐさ研究室」のお二人と、季節ごとに実験や観察を楽しむ連載。
第二回の今回は、土の中の生きものの観察方法を、4回に分けて紹介していただきます。
▷①土壌動物は面白い!
▷②吸虫管ってなんだ?
▶︎③土壌動物はどこにいる?
▷④顕微鏡で観察してみる
○登場人物:川上えりか、清水美波(ちぐさ研究室) 植野聡子(新林編集部)
清水 前回は土壌動物を捕獲して観察するための道具を準備しました。今回は、土を採取して、吸虫管で土壌動物を捕まえていきます。
土を採取しよう
ーー 一口に土と言っても違いがあるのでしょうか?
清水 落ち葉などを分解する土壌動物は、エサとなる落ち葉がある湿ったところを好みます。一枚落ち葉をめくってみて、その下に細かくばらばらなった落ち葉があるようなところがねらい目。色んな環境の土を採取して、種類や数にどれくらい差があるかを調べてみてもいいですね。土の採取は、落ち葉がある表面の層だけで十分です。スコップでビニール袋に入れて持ち帰り、できれば当日のうちに観察します。
ーー なるほど、落ち葉の状態で土壌動物がいるかどうか予測がつくんですね。
採取するときの注意点
・私有地で土壌を採取するときは、所有者に許可を取りましょう
・公園等で土壌を採取するときは、管理者に許可を取りましょう


清水 今回は落ち葉がたくさんたまっている谷の土、松葉が積もった乾燥気味の尾根の土、家の庭の土、沢沿いの水はけがよい土、倒木の腐った部分の5種類を用意してみました。


吸虫管を使って土壌動物を捕ろう
清水 土壌動物採取には村の子どもたちが集まってくれました!小学生3人と一緒に探していきます。

ーー 楽しそう!虫に興味のある子どもたちがいるのはいいですね。
①まずは採取した土を、トレーに広げます。利き手にピンセット、反対の手に吸虫管の吸入口、口でチューブをくわえると経験上最もスムーズに採取ができます。

②ピンセットでちょっとずつ落ち葉や土をかき分けながら、飛び跳ねたりもぞもぞしているものを見つけたらシュッと吸い上げてみましょう。

③吸虫管で吸った虫は管の中に集まります。チューブの先端にガーゼを付けているので、虫が口に入ることはありません。

④ある程度大きいものはピンセットでつまんで構いません。シャーレに移していきます。捕獲した土壌動物は生きたまま観察してもいいですが、顕微鏡などで観察する場合はアルコールが入ったシャーレなどの容器に移して動きを止めます。

真剣な顔をして土の中を探しては息を吸い上げているかと思えば、大きな生きものがいるたびにキャッキャしながらピンセットでつまみあげていました。

捕った土壌動物の保管方法
顕微鏡で観察するために、プレパラートをつくっていきます。
[必要な道具]
①ピンセット
②アルコール
③スライドガラス★
④カバーガラス★
⑤ホイヤー試液★
※★マークの材料は、ホームセンターや 100 均では手に入りませんが、通販サイトで購入可能です。

[プレパラートの作り方]
ーー 吸虫管を使った土壌動物の捕獲からプレパラートの作成まで、研究者になったような本格的な内容でした。
川上 次回は、顕微鏡を使って観察していきますよ。
(つづきはこちら↓)
撮影:Atsushi Akiyama
応用編|吸虫管でも捕まえられない土壌動物を探したいとき
今回は、採取してきた土壌から肉眼で土壌動物を捕獲し、顕微鏡などを使って種類を判別するという方法で行いました。しかし、この方法では肉眼では見つけにくい土壌動物を取り逃してしまいます。特に落ち葉に付いている土壌動物たちは見逃している可能性が高いです。そんな小さなサイズの土壌動物も見つけるためには、「ツルグレン装置」と呼ばれる装置を使う方法があります。

ツルグレン装置とは?
土壌動物は、普段暗い場所で生活をする種類が多いため、光や乾燥が苦手です。そのため、電球などを上から当てると、光から逃げ、土壌動物は下に移動します。
ツルグレン装置は、この性質を利用した捕獲装置です。数日間土壌に電球を当て、下にエタノールを入れた容器を用意しておくと、土壌動物が容器の中に落ちてきます。2L ペットボトルなど、身近に手に入る材料で簡単に作ることができます。数日間実験を続ける余裕があるときは、ぜひチャレンジしてみてください。
シリーズちぐさ研究室の研究日誌

ちぐさ研究室の研究日誌
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