まだ見ぬ生きものを求めて!土の中を観察してみる ④顕微鏡で観察してみる
ちぐさ研究室の研究日誌 #2
岡山県・西粟倉村で活動する「ちぐさ研究室」のお二人と、季節ごとに実験や観察を楽しむ連載。
第二回の今回は、土の中の生きものの観察方法を、4回に分けて紹介していただきます。
▷①土壌動物は面白い!
▷②吸虫管ってなんだ?
▷③土壌動物はどこにいる?
▶︎④顕微鏡で観察してみる
○登場人物:川上えりか、清水美波(ちぐさ研究室) 植野聡子(新林編集部)
ーー 前回は土の採取から吸虫管を使った虫の捕獲、そして捕獲した虫を観察するための準備まで、盛りだくさんな内容でした。
川上 虫を捕獲するまでも面白かったですが、いよいよここからが本番!西粟倉の小学生たちと前回制作したプレパラートを顕微鏡で覗いてみました。顕微鏡は、博物館や学校などの施設で一時的に利用可能な場合があるので、ぜひ地域の施設などを調べてみてください。
顕微鏡を使って土壌動物を観察してみる
①プレパラートを顕微鏡にセットし、まずは一番低い倍率で覗いてみます。
顕微鏡を覗いてみると、、、
ちょっとエビっぽいこの子。トビムシですね。
トビムシとダニ
クモの仲間?
同じ土壌動物でも、色んなサイズの子たちがいるんです。ゴミムシの仲間?とトビムシ
見た目の通りの名前のカニムシ。はさみがかっこいい!
ちょっと大きめの動物たちは、こちらの実体顕微鏡で観察してみました。
なにやら足の多い生きもの!
土壌動物カンタン解説
トビムシ
体のサイズは5mm以下で、2-3mmのものが多い。お腹にある跳躍器を使って、地面を蹴りつけて飛びながら移動することが、名前の由来になったとされている。
日本国内には約400種類生息していると言われていて、土の中の菌や落ち葉や腐植を食べて生きている。
1mmしかないトビムシでも、5cmほどの高さまでジャンプしていると言われているので、人間に例えると150cmの人が75m(25階建てのビルくらい)までジャンプできる、ということになりますね。
カニムシ
体のサイズは1-7mmで、サソリのような見た目なので見つけやすい。センサーの役割を持つハサミ(触肢|しょくし)を持っていて、暗闇でも振動を感知できる。また一部の種類はハサミに毒腺を持っていて、毒を注入して獲物を捕まえることができる。基本的に肉食で生きた土壌動物しか食べない。
場所ごとに虫の数や種類は違う?
ーー 参加した小学生のみなさんは、どんなことを発見しましたか?
♠️参加者 谷の土は色んな形の落ち葉があって、土の匂いがすごい。たくさん虫が捕まえられた!
川上 谷の土の中からは、ちょっと大きめのヤスデから、ぎりぎり目に見えるサイズの小さな虫まで、色んな虫が捕まったね。土壌動物はじめじめした場所が大好きだから、日かげが多くて、その条件が当てはまる谷の土ではたくさん見つかったのかもね。
♦︎参加者 尾根の土、沢沿いの土、倒木からは全然見つけられなかった…
清水 逆に、尾根は普段から乾きやすく、日当たりもいいことが多いよね。それに、今回採取した尾根にはアカマツがたくさん生えていたから、落ち葉もアカマツの薄い葉っぱが多かったね。こういった場所では、今回の方法では土壌動物をたくさん見つけることは難しいです。
ーー それはなぜですか?
清水 土壌動物は、じめじめした場所に加えて、落ち葉がたくさんある場所が大好き。だから、乾燥しやすくて、落ち葉の量が少なかった今回の尾根では、土壌動物が見つかりにくかったのかもしれないですね。
♣️参加者 家の庭の土からは、大きなミミズが見つかったけど小さい虫はほとんどいなかった。土の色も灰色っぽくて他の土とぜんぜん違う。
川上 沢沿いや倒木、庭の土で少なかったのは、やはり落ち葉が少ないことが原因なのかもしれないね。
清水 今回のような簡単な調査だけでも、土壌動物が落ち葉が多い場所、それもできるだけ色んな種類の落ち葉がある場所を好んで住む傾向があるかも!?ということが分かってきますね。
ーー なるほど!これからいろんな落ち葉がある場所を見つけたら、ここに生きものがたくさん住んでいるかも?と、想像が膨らませられそうです。
身の回りの土壌動物を探してみよう
川上 「土壌は貧乏人の熱帯雨林だ」という言葉があります。これは、わざわざ外国の熱帯雨林まで行かなくとも、足元の土壌動物を調べれば、熱帯雨林での研究と同じくらいの発見が得られることがある!という興奮を表しています。
清水 今回紹介したように、土壌動物を捕まえて観察するための道具は、ほとんどが100均やホームセンターで揃えることができます。また、どんなに都会に住んでいても、土のない場所に暮らしている人はいないですよね。みなさんの庭の土の中からも、思いがけない土壌動物が発見されるかもしれません。みなさんもぜひ、身の回りの土壌動物を調べてみませんか?
ーー 顕微鏡を使った観察は難しくても、吸虫管を作って捕獲して観察するだけでも足元に生きものの宝庫があることが実感できそうですね。ちぐさ研究室の川上さん、清水さん、ありがとうございました!
(土壌動物観察はこれでおしまいです。次回は春にお届けします。)
撮影:Atsushi Akiyama
注意点
- 私有地で土壌を採取するときは、所有者に許可を取りましょう
- 公園等で土壌を採取するときは、管理者に許可を取りましょう
参考文献
- 『博物館のプロのスゴ技で自然を調べよう (全4巻)化粧箱入り』
少年写真新聞社
共著:小川 誠/奥山清市/矢野 真志
協力:西日本自然史系博物館ネットワーク
- 『土の中の生き物たちのはなし』
朝倉書店
編者:島野智之、長谷川元洋、萩原康夫
- 『土壌動物学への招待-採集からデータ解析まで』
東海大学出版会
編著者:日本土壌動物学会
発行者:大塚保
- User. M B. et al., 1982. A review of progress in understanding the organization of communities of soil arthropods. Pedobiologia 23,126 144.
シリーズちぐさ研究室の研究日誌
ちぐさ研究室の研究日誌
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