春の「雑草」探偵になってみよう! ④結果発表とまとめ
ちぐさ研究室の研究日誌 #3
岡山県・西粟倉村で活動する「ちぐさ研究室」のお二人と、季節ごとに実験や観察を楽しむ連載。春の今回は、あちこちで芽吹き始めた「雑草」を徹底調査!調査の様子を4回に分けて紹介していきます。
▷①「コドラート法」で調査してみよう!
▷② 同定大会 花編
▷③ 同定大会 草編
▶️④ 結果発表とまとめ
○登場人物:川上えりか、清水美波(ちぐさ研究室) 植野聡子(新林編集部)
調査完了!
川上 ついに、50cm×50cmの範囲の全ての植物を調べ終わりました!
途中経過を全てお伝えすることはできませんでしたが、全部で7種類の植物を見つけることができました。5種類は葉っぱだけでは同定が難しく、次回の宿題となりました…。
ーー お疲れ様でした〜(拍手)今回の調査はいかがでしたか?
清水 本当は全部の植物を同定したかったのですが、花の咲いていない葉っぱだけの植物はどこから手をつけたらいいか分からず泣きそうになりました…。樹木だと、「葉」「花」「樹皮」など、色んな部位から検索していく方法があるのでだいぶ楽なのですが…。
川上 今回対象とした草花たちについては、「葉」から調べていく方法が図鑑でもWeb上のデータベースでもなかなか見つけられませんでした。図鑑の最初の方に、「葉のつくり」や「葉の付き方と茎」など、葉の形や付き方を表す名称が載っているものが多いので、その形や名称をWeb上のデータベースで調べる時に活用してみると同定に近づけるかもしれません。
ーー 葉っぱだけで調べるのは難易度が高そうでしたが、ひとつの植物のなかでも下の方と上の方で葉のつき方に違いがあったり、じっくり観察するといろんな発見があるなぁと思いました。
清水 あと、花が咲いているかどうか、花の色から絞り込めるかどうか、ということが草本の同定にはかなり大事だということを実感しました。
ーー そうですね。初心者は、すでに花が数種類咲いているところにコドラートを設定すると、挫折せずにできそうです。あと、手触りやにおいが同定する手がかりになるのも面白かったですね。
川上 そうなんです。最後は触ったり細かい部分まで見ていくことで、今回のムシクサやキュウリグサのように、「特徴が一致してる!?」という感覚が得られる瞬間はすごく楽しかったです!
清水 同じコドラート(調査範囲)を数か月間に渡って観察していくだけでも、かなりの情報量と面白い研究結果になりそうですね。
ーー 確かに、季節の移り変わりとともに植物の変遷も見えてきそうです。自宅の庭など、コドラートの枠を外さなくても良い場所だったら、ぜひそのまま継続調査してもらいたいですね!
「雑草」と、普段は一口でくくられがちな草花たち。じっくり1つ1つに目を向けてみるという地道な調査でしたが、いかがでしたでしょうか。
私たちも、普段は大きな樹木ばかりを見ているため、足元の草花たちのことはまだまだ知らなかった!ということを実感させられました…。それでも、やっぱり「まだまだ知らない」という世界があることにわくわくする楽しさがあります。厳しい冬が終わり、いち早く私たちの足下で春を感じさせてくれる、個性的な「雑草」たちのことを知る楽しみを、少しでも味わって頂けたら何よりです。
庭やアスファルトのすき間、田んぼのあぜ道など、皆さんの身近に感じられる場所でも、ぜひ「雑草」たちの個性を調べてみませんか?
撮影:Atsushi Akiyama
注意点
- 私有地で土壌を採取するときは、所有者に許可を取りましょう
- 公園等で土壌を採取するときは、管理者に許可を取りましょう
参考文献
- 『親子で観察する 身近な雑草図鑑』
ナツメ社
著者:天野 誠、岩槻秀明 - 参考文献
- 『色で見わけ 五感で楽しむ 野草図鑑』
ナツメ社
監修:藤井 伸二
著者:高橋 修
シリーズちぐさ研究室の研究日誌
ちぐさ研究室の研究日誌
岡山県・西粟倉村で活動中の「ちぐさ研究室」によるちょっと本格的な実験や観察の数々
大人も夢中になる?虫網を使わない虫の捕まえ方①イエローパントラップ
[ちぐさ研究室の研究日誌 #1] 新連載スタート!ちぐさ研究室のお二人と季節の実験や観察を楽しもう。
大人も夢中になる?虫網を使わない虫の捕まえ方②ピットフォールトラップ
[ちぐさ研究室の研究日誌 #1] 虫に落とし穴をしかけてみると...?
大人も夢中になる?虫網を使わない虫の捕まえ方③ビーティング
[ちぐさ研究室の研究日誌 #1] 原始的な虫捕りにチャレンジ!
大人も夢中になる?虫網を使わない虫の捕まえ方④ライトトラップ
[ちぐさ研究室の研究日誌 #1] 光に集まる虫を観察してみよう!
まだ見ぬ生きものを求めて!土の中を観察してみる ①土壌動物は面白い!
[ちぐさ研究室の研究日誌 #2] 冬の研究テーマは、土の中の生きもの。面白い土壌動物たちに出会おう!
まだ見ぬ生きものを求めて!土の中を観察してみる ③土壌動物はどこにいる?
[ちぐさ研究室の研究日誌 #2] 土の採取と土壌動物の捕獲をしてみよう!土壌動物はどんなところにいるのかな?
まだ見ぬ生きものを求めて!土の中を観察してみる ④顕微鏡で観察してみる
[ちぐさ研究室の研究日誌 #2] 西粟倉村の土にはどんな生物がいるのかな?
春の「雑草」探偵になってみよう! ①「コドラート法」で調査してみよう!
[ちぐさ研究室の研究日誌 #3] 春の研究テーマは、雑草!どんな植物が生えているのか徹底調査しよう。
春の「雑草」探偵になってみよう! ②同定大会 花編
[ちぐさ研究室の研究日誌 #3] いよいよ調査開始!図鑑を片手に花のついた植物を同定してみよう。
春の「雑草」探偵になってみよう! ③同定大会 草編
[ちぐさ研究室の研究日誌 #3] 次はレベルアップ!花がついていない草を同定していこう。
まだ見ぬ生きものを求めて!土の中を観察してみる ②吸虫管ってなんだ?
[ちぐさ研究室の研究日誌 #2] 土壌動物を捕まえる吸虫管作りと観察道具の準備をしていきましょう。
関連記事
春のスターは寝て暮らす?~春の妖精カタクリの暮らしぶり~
[森の舞台の役者たち ~植物の暮らし拝見~ #4] 植物生態学者・柳沢直教授によるエッセイ。
森林の世界はもっとずっと、面白い ちぐさ研究室/川上えりかさん 清水美波さん
[西粟倉の人たち③] 2021年に西粟倉村の地域おこし協力隊の2人で結成した「ちぐさ研究室」とは?
森を食べてみる クラシック編
日本人が縄文時代から親しんできたどんぐりやの食文化とは?
森の舞台の役者たち ~植物の暮らし拝見~
木を見て森を見ず? いやいや、うっかり見過ごしてしまうような森の小さな草木たちも森林という舞台で懸命に生きているのです。森を足元から見てみると、そこには魅力あふれる役者たちが暮らしていました。
森と学び
自分でも森林について学びたい、何か実践してみたいと思った時、どのような方法があるのでしょうか?ここでは、日々の暮らしの中 …
森と工芸―漆編
新林では、森林資源を使ったものづくりの中でも、木を伐り、製材して作られるものについて取材を行ってきました。しかし漆は、樹 …