身近なもので骨格標本を作ってみよう! ①骨格標本って作れるの?
ちぐさ研究室の研究日誌 #6
岡山県・西粟倉村で活動する「ちぐさ研究室」のお二人と、季節ごとに実験や観察を楽しむ連載。
第6回の今回のテーマは「骨格標本」
身近なものと道具で骨格標本をつくってみましょう!
▶︎①骨格標本って作れるの?
▷②早速骨にしてみよう!
▷③組み立てて観察しよう!
○登場人物:川上えりか、清水美波(ちぐさ研究室) 植野聡子(新林編集部)
骨格標本、かっこいいけど難しそう…?
ーー ちぐさ研究室の川上さん、清水さん、こんにちは!今年の冬は寒いですね〜。西粟倉村はいかがでしょうか?
川上 こんにちは、ちぐさ研究室です。西粟倉村はすっかり雪の季節。きれいな景色もその寒さゆえ、外に出るのが少しおっくうなこともあります。そんな時は、暖かい屋内でじっくり「骨」の美しさに触れてみませんか。
ーー 「骨」の美しさとは?
清水 博物館で、動物の骨格標本を見たことがある方も多くいると思います。生きて動いている動物も美しいですが、その内部で体を支える骨は機能美にあふれ、ほんとうにかっこいいものです。そんな骨格標本、憧れで夢だけど自分にはとても…と思っている方も多いのではないでしょうか。
ーー 骨格標本は見るもので、作るなんて考えたこともなかったです。
川上 ちぐさ研究室では、そんな憧れから村内の有害駆除や交通事故で亡くなった動物を引き取り標本づくりを始めました。今まで手探りでアナグマやテンなど4個体ほどを解体・標本化していますが、野生動物なので衛生的な問題もあり、家でやるには少し大がかりな準備が必要ですね。
ーー わぁ〜立派!まさに博物館のようですが、確かにこれは大掛かりな作業ですよね。
清水 ところが!小さな動物やパーツだけであれば比較的簡単にチャレンジすることができます。今回は、身近に手に入るパーツを使って、一緒に骨格標本を作ってみましょう!
ーー 身近なパーツですか…?
川上 今回は、近所のスーパーで入手した鳥の手羽先を準備しました。
手羽先以外には、豚足や、丸鶏なども入手しやすいので、初めての標本づくりにはおすすめです。
ーー なるほど〜。手羽先なら簡単に手に入りますし、サイズも小さいから挫折せずにできそうな気がします。入門編に良いですね。
清水 まずは必要な道具を準備していきます。
骨格標本を作るための道具
【準備するもの】
川上 鍋は、煮込んで除肉を行う時に使います。大きい動物ほど、パーツも多く、左右なども分かりにくくなるので、牛乳パックをラベル代わりに使ったり、お茶パックで小分けにしてタコ糸でラベルをつけたり、など小物を使って工夫します。
ーー 思ったよりたくさんの道具が出て来ましたが、入れ歯洗浄剤は何に使うのでしょうか?
清水 入れ歯洗浄剤は、タンパク質を分解する成分が含まれているため、除肉をするために非常に便利です。鍋での煮込みでは取り切れなかった肉を取り除くために使います。
川上 長期保存を行う場合には、除肉が終わった骨の脱脂のためにアセトンに漬けることが必要です。身近で手に入るアセトンとしては、マニキュアの除光液がおすすめです。
ーー なるほど、除光液が使えるんですね。身近なものが実験に応用できるのは面白いですね。
清水 今回はスーパーで入手したお肉のため、「採取」を行ったわけではありませんが、もし野生で入手した標本などの場合は、標本ラベルに最低でも採取日・採取者・採取場所・種名を記録します。本格的な標本資料にする場合には、さらに性別、体重、体長、頭胴長、耳長、尾長(尾の付け根から毛を含めない先端)、後足長(かかとから爪を含まない指先まで)などの項目を記録する必要があります。
ーー 今回は、入手したスーパーの名前や購入日などを記入して、本格風なラベルを作っても面白くなりそうですね。
川上 また、頑丈に組み立てて長期で保管したいという場合には、針金などを使った「コイル留め」という組み立て方法を使います。これらの材料も、ホームセンターで入手することができます。ただ、この方法を細い骨や小型の骨に対して使うと、骨が壊れてしまうこともあるので、注意が必要です。部位や骨の特徴によって接着剤とコイル留めを使い分けるといいかもしれません。
【コイル留めに使う道具】
清水 次回はこれらの道具を使って、手羽先を骨の状態にしていきますよ。
シリーズちぐさ研究室の研究日誌

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