木を見て森を知ろう!「毎木調査」をやってみよう ②必要な道具と図鑑での調べ方
ちぐさ研究室の研究日誌 #5
岡山県・西粟倉村で活動する「ちぐさ研究室」のお二人と、季節ごとに実験や観察を楽しむ連載。
第5回の今回は、毎木調査のやり方と調査レポートを、4回に分けて紹介していただきます。
▷①毎木調査って何だろう?
▶︎②必要な道具と図鑑での調べ方
▷③調査をやってみよう!
▷④結果発表とまとめ
○登場人物:川上えりか、清水美波(ちぐさ研室) 植野聡子(新林編集部)
ーー 毎木調査を始める前に、どんな道具を準備する必要がありますか?
必要な道具をそろえよう!
清水 毎木調査をするために必要な道具を紹介します。★マークは必須なもの、それ以外はなくても大丈夫です。
【準備するもの】
- 樹木図鑑★
- メジャー(木の太さを測る用)★
- メジャー(区域の設定用)★
- 目立つテープ★
- 鉛筆または油性ボールペン★
- 記録用紙★
- バインダー★
- ガンタッカー
- 立木調査用ナンバーテープ
川上 それぞれの道具について、順に見てみましょう。
樹木図鑑
樹木を調べるのに必要です。ちぐさ研究室では、樹木図鑑作家である林将之さんの図鑑を使用しています。調べ方は後述しますが、おすすめはこちらの2冊。今回は②を使用しています!
①葉っぱで見分け五感で楽しむ 樹木図鑑
林 将之=監修・写真/ネイチャ-・プロ編集室=編著/2014年/ナツメ社
日本で身近な樹木375種類が掲載されている図鑑。葉の特徴を区分したインデックスから目の前の樹木を調べることができ、初心者に特におすすめです。
②樹木の葉: 実物スキャンで見分ける1300種類
林 将之著/2019年/山と渓谷社
日本最大級、1300種が掲載された葉っぱ図鑑。北海道から九州まで、野生で見られる木本植物はほぼこの図鑑で調べることができます。検索に慣れるまで少し練習が必要です。
メジャー(木の太さを測る用)
ホームセンターでよく売られているストッパーがついたものは素材が硬いため、木に巻きつけることができるソフトメジャーを使用しましょう。よほど対象地の木が太くない限り、2mあれば十分です。
毎木調査用のメジャーもあり、今回はこちらを使いました。表面は普通のメジャーですが、裏面は円周を測るだけで直径が分かる「パイメジャー」になっています。
メジャー(区域の設定用)
次は区域の設定用のメジャーです。毎木調査をするときは正方形の区域を設けますが、その一辺の長さを測るためのものです。この長さでなければならない、ということはないので、好きな長さに切った紐やロープでも良いです。
目立つテープ
区域を測ったあと、四つ角を分かりやすくするためのものです。
記録用紙
調査した個体の番号、種名、周囲長、気になることを記録できるような表を用意します。
ナンバーテープ
毎木調査は決めた範囲の中にある樹木の種類と大きさを計測する調査ですが、毎年実施して個体の成長を追うことも多いです。今回はその追跡調査を可能にするためにも、木ごとに番号をふるナンバリングも行っています。ガンタッカーで木に打ち付けます。ナンバーテープで、毎年の追跡調査が可能になります。打ち付けるときは、所有者や管理者に許可を得ましょう。
ガンタッカー
ナンバーテープを木に打ち付けるためのものです。それに合う針も用意しましょう。
ーー これで、用意する道具のポイントが分かりました。次は何をしていきますか?
どうやって樹木を調べるの?
清水 森へ出かける前に、樹木の調べ方をおさえておきましょう。今回ご紹介した図鑑2冊は、どちらも同じ検索方法で調べることができます。目の前の樹木を調べるときは、次の4つのポイントに着目してみましょう。
①葉の形
葉に切れ込みが入っていないか、モミジのように入っているか、マツのように針状になっているか、ちょっと見極めが難しいのですが複数の葉で1枚の葉を形成する「複葉」か、などを見極めます。
②葉の付き方
葉が枝に対して対になってついているか、互い違いについているかを見ます。
③葉のふち
葉のふちのギザギザを鋸歯(きょし)といいます。鋸歯があるかないかを見ます。
④落葉樹か常緑樹か
葉をつけた季節に見極めることは難しいですが、冬にすべての葉が落ちる落葉樹か、一年中葉をつける常緑樹かで区分されます。
これらの4つの区分から、樹木の候補を絞って、目の前の葉の形や特徴と一致するものを探します。
川上 次回は、いよいよ森へ出掛けて調査をしていきましょう!
シリーズちぐさ研究室の研究日誌
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