木を見て森を知ろう!「毎木調査」をやってみよう ①毎木調査って何だろう?
ちぐさ研究室の研究日誌 #5
岡山県・西粟倉村で活動する「ちぐさ研究室」のお二人と、季節ごとに実験や観察を楽しむ連載。
第5回の今回は、毎木調査のやり方と調査レポートを、4回に分けて紹介していただきます。
▶︎①毎木調査って何だろう?
▷②必要な道具と図鑑での調べ方
▷③調査をやってみよう!
▷④結果発表とまとめ
○登場人物:川上えりか、清水美波(ちぐさ研室) 植野聡子(新林編集部)
ーー ちぐさ研究室の川上さん、清水さん、こんにちは!今年は11月に入ってようやく涼しいと感じる気温になってきましたね。
清水 こんにちは。ついこの前、新緑の季節がやって来た!と喜んだ気がしたのですが、あっという間に秋めいて、日中も過ごしやすい気温になってきました。樹木たちも、そろそろ葉っぱを落とす準備を始めているのではないでしょうか。
ーー そうですね。春は雑草を調べてみましたが、落ち葉の季節は、落ち葉の下の土壌動物を調べるのにも良い季節ですね。
川上 今回も森に出かけて調査をしていきますよ。「毎木調査(まいぼくちょうさ)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?恐らく、ほとんどの方々が初めて聞く単語だと思います。何か「調査」の方法なのだろうな、と予想する方もいるかもしれません。でも「毎木」が何を指しているのか、分かりにくいですよね。
「毎木調査」って何?
ーー 確かにそうですね。ちなみに「毎」の字を調べると…“繰り返される物事をいう名詞に付いて、そのたびごとの、の意を表す。(例:毎時間、毎試合)”とありますね。毎木調査は、木の調査を繰り返し行うということになるのでしょうか?そもそも木の調査とは?
清水 「毎木調査」とは、ある一定の区画内に生えている全ての樹木※について、その種類や、幹の太さ、高さなど様々な情報を調べる調査のことです。
※調査の手法によって、対象とする木のサイズを限定する場合もあります。
ーー 全ての樹木というと、なかなか大変な作業になりそうですね!種類やサイズを調べるのにはどんな意味があるのですか?
「毎木調査」で何が分かるの?
川上 この調査を行うことで、どんな種類の木が多いのか、どのくらいの大きさの木があるのか、など、その森林の基本的な特徴を捉えることができます。また多くの場合、毎木調査は年に1回など、1つの場所で継続して行われます。毎年続けていくと、その樹木がどのくらいのスピードで大きくなっていくのかを記録できますよね。
ーー 同じ種類の樹木だったら、同じスピードで大きくなるような気がしますが…
清水 私も最初はそう思っていました…!実は木が大きくなるスピードは土の状態や、日当たりの良さ、周りの樹木との競争度合いなど色んな要因によって影響を受けると言われているので、少し離れた森で比べても、全く違う結果になることもあるのです。
川上 他にも、森の中では常に樹木同士が競争しています。毎年続けていくと、ある年には枯れて倒れている樹木が出てきたり、倒れていなくても弱っている樹木が見つかることもよくあります。どんな種類の樹木が生存率が高いのか、などを調べるのにも、この調査は役立ちます。こんな風に、1本1本の樹木の成長や変化だけでなく、区画や森林全体の変化を追いかけることができる調査が、「毎木調査」なんです!壮大で、わくわくしてきませんか?
ーー 樹木って成長も遅いので、変化に気づきづらいですが、毎年観察することで実はすごい変化しているかもしれない…?森を見る目が変わりそうです。普段何気なく見ている街路樹や公園の樹木などでもできそうな調査ですね。
清水 確かに、近所に森がなくても、公園の一角に生えている樹木でもできる調査です。私も大学の必修の実習で初めてこの調査をした時には、何でこんな1本1本調べるの?何が分かるんだろう?と疑問に思っていました。でも毎年の変化を追っていくと、「この樹種は他の樹種よりも成長スピードが早いのは何でだろう?」「この樹種はよく倒れて枯死してしまっているけど、風に弱い特徴があるのかな」など、何となくナゾトキのような気持ちで、森のことを考えられる楽しさがありました。今回は、ちぐさ研究室で3年間毎木調査を続けてきた場所で実際に調査をしながら、毎木調査の楽しさをお伝えしたいと思います!
ーー 3年の調査でどんな変化が発見できたのか、楽しみです!
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