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シリーズちぐさ研究室の研究日誌

岡山県・西粟倉村で活動中の「ちぐさ研究室」によるちょっと本格的な実験や観察の数々

初心者にもオススメ!?シダ植物調査をしてみよう ②シダ植物の観察ポイント

ちぐさ研究室の研究日誌 #8

岡山県・西粟倉村で活動する「ちぐさ研究室」のお二人と、季節ごとに実験や観察を楽しむ連載。第8回のテーマは「シダ」です。前回の石に続いて、ちぐさ研究室も初心者の分野に取り組みます。みなさんも一緒にシダ植物の世界を楽しんでいきましょう。

 ▷①シダ植物ってなんだ?
 ▶︎②シダ植物の観察ポイント
 ▷③シダ植物を同定してみよう
 ▷④まとめ

○登場人物:川上えりか、清水美波(ちぐさ研究室) 植野聡子(新林編集部)

シダ植物の構造

清水 早く外へ繰り出してシダ植物を探したいところですが、まだ同定の全く手がかりをつかめていません。このままでは、シダ植物を見つけてもどの部分を見て見分けていいか分かりません…。
もう少し外へ行くのを我慢して、シダ植物のつくりと同定に必要なポイントを深掘りしていきましょう。

ーー そもそも、シダ植物は樹木とどう違うのでしょうか?

川上 まずは、シダと樹木の構造を見比べてみましょう。左がシダ植物、右が樹木の葉っぱ(イロハモミジ)の構造です。

シダのつくり
樹木のつくり

シダであっても樹木であっても、1枚の葉は大きく葉の部分である「葉身(ようしん)」と、葉身を支える「葉柄(ようへい)」に分かれています。

清水 図を見比べていただくと分かるように、シダは葉柄が直接地面から伸びているのに対して、樹木では葉柄は枝から伸びていますよね。
実は私たちが「シダ植物」として認識している部分は、樹木でいうと「1枚の葉」が地面から出ている状態にあたります。茎(樹木でいうところの枝)は多くの場合、「根茎(こんけい)」として地中にあり、地中の根茎から、根っこがひげ状に出ている構造になっています。

川上 また、シダ植物には第1回にも出てきた「胞子」を葉の裏につける、という大きな特徴があります。
シダの葉っぱを裏返すと、ドット柄のようにつぶつぶした何かがびっしりとついていることがあります。これは、胞子が入った袋である「胞子嚢」の集まりです。この、「胞子嚢」の集まりのことを、「胞子嚢群」、別名「ソーラス」と呼びます。

ーー おお…これは見るのが苦手な人もいるかもしれないですね。

シダ植物を見分ける観察ポイント

清水 さて、全体の構造をざっくり理解したところで、同定のための見分けポイントを、私たちなりに整理したのでご紹介します。

①葉のつき方(葉身のかたち)
今回使用した「シダハンドブック」の最初の検索ページを開くと、「葉のかたちによる検索表」が載っています。まず、ここが同定に向けた第一段階です。先ほどのシダ植物の構造で示している「葉軸(ようじく)」に対して、葉がどのように切れ込んでいるかを観察しましょう。

  • 単葉タイプ:「葉軸」に対する切れ込みがないもの
  • 1回羽状タイプ:葉軸まで、または葉軸近くまで切れ込むもの
  • 2回羽状タイプ:羽軸(うじく)まで切れ込むもの
  • 3回羽状タイプ:さらに小さく、小羽片(しょううへん)の軸(中肋)まで切れ込むもの

樹木でも、1枚の葉のように見えて、複数の小さい葉から構成されている、という「複葉」タイプの樹種がありますが、それらの検索方法と似ています。羽状タイプのように切れ込みが複数回あっても、シダ植物はすべて地上部に出ている部分が1枚の葉っぱ、という構造になっています。

(過去の連載記事:毎木調査の回を参照)

単葉
1回羽状
2回羽状

②小羽片(しょううへん)のかたち
次に、「小羽片」の形を観察します。まずは縁にぎざぎざ(鋸歯)があるかないか、で絞り込み、ぎざぎざがある場合はその大きさや深さを図鑑の写真と見比べていきましょう。

ぎざぎざのある小羽片
ぎざぎざのない小羽片

③胞子嚢群(ソーラス)
葉の裏にある胞子嚢群も、種によってかなり姿かたちが違っています。
色、つく位置(葉のふちか、中央かなど)、ソーラスを被う包膜の有無、包膜の縁の切れ方などが見分けるポイントになります。全部のシダの葉の裏に胞子嚢群があるかというと、そういう訳でもありません。株や葉が若い場合などは、ついていないことがありますし、1つの株の中で胞子をつける葉と、つけない葉を分けるタイプのシダもいます。見つけた葉の裏に胞子嚢群が無い場合は、近くで胞子嚢群がついた同じ種類のシダを探してみてください。
観察にはルーペがあると便利です。

④葉柄
葉柄の長さや、葉柄についている「鱗片(りんぺん)」と呼ばれる部位の特徴で見分けることができます。「鱗片」は聞き馴染みが無い言葉かもしれませんが、シダの「鱗片」というのは、葉柄や葉軸の組織が変化した、毛よりも幅があるものを指します。毛と似ているのですが、厳密には毛とは違うようです。

川上 同定の際に観察すべきポイントをおさえられたでしょうか?

ーー ①葉っぱのつきかた②葉っぱのぎざぎざ③葉っぱの裏④葉柄の長さや葉柄の鱗片の4つですね。シダはシンプルな構造だから、観察するポイントも細かくなりますね。それでは、いよいよシダ植物を探しに出発です!

(次回に続きます)

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