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シリーズちぐさ研究室の研究日誌

岡山県・西粟倉村で活動中の「ちぐさ研究室」によるちょっと本格的な実験や観察の数々

初心者にもオススメ!?シダ植物調査をしてみよう ④まとめ

ちぐさ研究室の研究日誌 #8

岡山県・西粟倉村で活動する「ちぐさ研究室」のお二人と、季節ごとに実験や観察を楽しむ連載。第8回のテーマは「シダ」です。前回の石に続いて、ちぐさ研究室も初心者の分野に取り組みます。みなさんも一緒にシダ植物の世界を楽しんでいきましょう。

 ▷①シダ植物ってなんだ?
 ▷②シダ植物の観察ポイント
 ▷③シダ植物を同定してみよう
 ▶︎④まとめ

○登場人物:川上えりか、清水美波(ちぐさ研究室) 植野聡子(新林編集部)

シダ植物は種類が減っている?

ーー 前回のシダ植物同定は順調に進みましたが、その後はどんな調査をしていったのですか?

川上 その後も見つけ次第、同定を繰り返し、今回の調査では、次の13種(1種未確定含む)が見つかりました!事前に村内の山の現場で仕事をしている知人に「シカの食害で、昔に比べて種数がものすごく減った」という話を聞いていたので、思ったよりも見つけられてひとまずよかったです。

住宅街:スギナ/イヌワラビ/イノモトソウ/ヤブソテツ(?)
岩 肌:ヤマヤブソテツ/クマワラビ/ゼンマイ
スギ林:イノデ
林 縁:シシガシラ/クラマゴケ/オシダ/ノキシノブ

清水 ただ、西粟倉村の図書館にあった「西粟倉村若杉天然林調査報告(1960)」では、1ha(100m×100m)の調査地2箇所で22種が見つかっている記録もあるので、やはり数はずいぶん減ったのかもしれません。

西粟倉村若杉天然林調査報告(1960)

ーー シカの食害はこんなところにも影響しているのですね。シダ植物が見分けられるようになってくると、今後の種数の変化に敏感になれそうです。

西粟倉で見つけたシダ植物たち

川上 さてさて、見つけた中には特徴的なものもいくつかあったので紹介します!
まず、いかにも「草」という風貌のこちら。これも立派なシダの仲間で、「ノキシノブ」といいます。細かい根を出して樹皮や岩に着生する「着生植物」で、標高約1,000mのミズナラに宿を借りていました。

ノキシノブ

ーー これもシダの仲間なんですね!確かに、直接地面から葉っぱ(葉柄)が出ています。

清水 後日、川上が岡山市に出かけたとき、街中の街路樹で西粟倉で見つけたよりもびっしりと着生したノキシノブの写真を送ってくれて、ふたりで盛り上がりました。

岡山市で見つけたノキシノブ
ノキシノブのクローズアップ

川上 次に「クラマゴケ」。よく作業道(土を切り盛りしてつくられた、山の中の舗装されていない道)に生えているのを見るも正直あまり気に留めていなかった植物なのですが、ぼーっと図鑑をぱらぱらしていたら「よく見るあの植物では?」と気付いてシダ植物と発覚。

クラマゴケ

ーー 様々な植物に紛れているのに、よく見つけましたね!

清水 「主茎にはまばらに、側枝には密に葉がつく」ことがよく似る「ヤマクラマゴケ」との違い。拡大して観察すると規則的な葉のつき方が美しい!

クラマゴケの主茎と側枝

ーー 本当だ!凝ったデザインですね。

川上 そして最後に、名前はおなじみ「ゼンマイ」。ワラビやコゴミ(クサソテツ)と並び、シダ系山菜の代名詞です。芽生えが食べられるので、芽生えの見極めはできても、それが成長し葉を広げた様子を改めて観察することはなかなかないのではないでしょうか。

ーー 確かに、あのくるくるとした芽が開くとどうなるのか、考えたことなかったです。

清水 私たちもそうで、これが何の植物か分からないまま調べ始めてゼンマイだと知ったときは驚きました。もっと葉が細かく繊細なものをイメージしていましたが、どこか大胆・豪快・大味な印象を受ける形態。ほかに似たような見た目のシダ類がほとんどなく、一度見分けられるようになると「ここにもゼンマイ」「あそこにもゼンマイ」とどんどん見つかります。

ゼンマイ

太陽に透かすと、美しい葉脈模様がよく見えます。

ゼンマイの葉脈

ーー こんな葉っぱが隠されていたなんて!春も夏も魅力的な植物だったんですねぇ。

初心者にもオススメのシダ植物同定

川上 「いかにもシダ!」というような種類はまだ同定に苦手意識がありますが、それでも今回の調査を経て今までにない親しみを感じることができました。個人的な感覚ですが、今までに樹木や草本、コケ類の同定をかじったりしてきた中で、一番入門しやすいといっても過言ではありません。コケ類のように顕微鏡がないと同定できないこともないし、樹木のように手の届かないところに葉をつけることも少ないし、季節や樹齢による形態の変化もほかの類に比べて少ない…シダ、ありがたい!

ーー 確かに、もっと見分けがつかないのではないかと想像していましたが、雑草の回よりどんどんと候補が絞られていくのが面白かったです!

清水 これをきっかけに、もっとシダ類の観察にいそしみたいと思います。ぜひみなさんもチャレンジしてみてくださいね。


西粟倉村で見つけたシダ植物たち


注意点

  • 採取を行う際は所有者に許可を取りましょう。

参考文献

シリーズちぐさ研究室の研究日誌

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