初心者にもオススメ!?シダ植物調査をしてみよう ①シダ植物ってなんだ?
ちぐさ研究室の研究日誌 #8
岡山県・西粟倉村で活動する「ちぐさ研究室」のお二人と、季節ごとに実験や観察を楽しむ連載。第8回のテーマは「シダ」です。前回の石に続いて、ちぐさ研究室も初心者の分野に取り組みます。みなさんも一緒にシダ植物の世界を楽しんでいきましょう。
▶︎①シダ植物ってなんだ?
▷②シダ植物の観察ポイント
▷③シダ植物を同定してみよう
▷④まとめ
○登場人物:川上えりか、清水美波(ちぐさ研究室) 植野聡子(新林編集部)
シダ植物観察は難しい?
ーー ちぐさ研究室の川上さん、清水さん、こんにちは!いや〜毎日暑いですね…!!
清水 こんにちは、ちぐさ研究室です。今年は早々に梅雨が明けて夏が始まり、暑くなるのが早かったですね。いよいよ植物たちも最盛期、植物観察にいそしんでいた私たちちぐさ研究室ですが、今まで敬遠していたものがシダです。
ーー おおシダですか。でもなぜ敬遠していたのでしょうか?
川上 私はシダと聞くと、三角形の面状に広がる葉が細かく分かれたような植物、湿ったところを好む、栄えたのは恐竜時代…と、何となくのイメージで捉えていました。だからこそ、それらの種類を見分けることはものすごく細かいことを見極めないといけないような気がして、なんだか億劫だったんですね。
しかし「食わず嫌い」はいけないと、図鑑を買って同定にチャレンジすることにしました!
ーー 確かに、花が咲くとか、季節によって変化があるといった特徴が分かりやすいイメージがないので、見分けるのが難しそうです。そもそも、シダ植物とは何者なんでしょうか?

シダ植物の生態
清水 まず、シダ植物が何かを整理してみましょう。「シダ」という分類が学校で出てくるのは中学1年生理科が最初のようですね。
シダ植物とは、「維管束植物のうち種子をつくらないものの総称」です。
コケ植物とは、水や栄養の通り道である維管束を持つか持たないかで区分されます。

川上 植物は最初、海の中で単細胞の藻類として誕生し、その後乾燥や重力に耐えられる強い細胞壁を獲得して陸上に進出してきました。最初はコケ植物が繁栄しましたが、維管束の発達によりどんどん大型化し、古生代石炭紀には水辺の近くに大きな森をつくるほどに繫栄したのがシダ植物です。種類によってはその高さ40m!その後、水がなくても種子を残せる種子植物が誕生したことで繁栄の座を譲りましたが、今でも地球上では約1万余り、日本国内では約700種が自生すると言われています。
ーー え!高さ40mですか!?10〜13階建てのビルくらいのシダがいたんですね。維管束の発達おそるべし!!
清水 ちなみに、シダが最も繁栄していた時代にはまだ死骸を分解する微生物がおらず、長い年月をかけて地中に埋もれ、分解されずに残った植物は地熱や圧力によって組織が炭素に置換されました。これが今の石炭となり、「石炭紀」の由来になっています。もし、このとき地下水や堆積物に含まれる鉱物に置換されると化石になります。
川上 さて、シダ植物は種子ではなく胞子を飛ばして繁殖するので、花を咲かせないことも大きな特徴です。代わりに種子植物では花のおしべやめしべに相当する、胞子をつくる器官である「胞子嚢(ほうしのう)」をもちます。この胞子嚢の形やつき方が種類によってさまざま!これは次回で詳しくご紹介しましょう。
オススメのシダ本
清水 シダの同定調査にあたり、シダ初心者ちぐさ研究室では図鑑を2冊用意しました。
一冊目は『シダハンドブック(文一総合出版)』。ハンドブックだけありとても持ち運びやすく、どんなときにシダに出会っても大丈夫。
川上 二冊目は『くらべてわかるシダ(山と渓谷社)』。大判で掲載種数も多く、葉の特徴が写真と照らし合わせやすいです。
清水 生息地には湿気の多いところを好むものが多く、山地の渓流沿いや谷、町中でも川沿いや日陰の護岸や石垣、木の幹に着生しているものもいます。中には日当たりや海岸を好むものもいます。今回はできるだけ多様な環境でシダを見つけたいので、近くを用水路が流れる住宅街から岩肌、そして山の林床を探しに行くことにしました。
ーー シダと言うと、湿ったところに鬱蒼と生えているイメージがありますが、日当たりの良い場所に生えていることもあるのですね。もしかして、これまで何気なく見ていた植物がじつはシダ植物だったということもありそうです。それでは早速出発していきますか!
川上 早速出発!しようとしましたが、図鑑をぱらぱらめくっていると、日ごろ見ている樹木とは同定ポイントが大きく違うようで、もう少し下準備をした方がよさそう。次回、掘り下げていきましょう!
ーー まずは涼しい室内でシダ植物の予習ですね。次回もよろしくお願いします!
(次回に続きます)
シリーズちぐさ研究室の研究日誌

ちぐさ研究室の研究日誌
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