メイン コンテンツにスキップ
新林
ちぐさ研究室の研究日誌の関連画像

シリーズちぐさ研究室の研究日誌

岡山県・西粟倉村で活動中の「ちぐさ研究室」によるちょっと本格的な実験や観察の数々

初心者にもオススメ!?シダ植物調査をしてみよう ③シダ植物を同定してみよう

ちぐさ研究室の研究日誌 #8

岡山県・西粟倉村で活動する「ちぐさ研究室」のお二人と、季節ごとに実験や観察を楽しむ連載。第8回のテーマは「シダ」です。前回の石に続いて、ちぐさ研究室も初心者の分野に取り組みます。みなさんも一緒にシダ植物の世界を楽しんでいきましょう。

 ▷①シダ植物ってなんだ?
 ▷②シダ植物の観察ポイント
 ▶︎③シダ植物を同定してみよう
 ▷④まとめ

○登場人物:川上えりか、清水美波(ちぐさ研究室) 植野聡子(新林編集部)

いよいよシダ探しへ出発

清水 前回までの同定のポイントを復習しながら、今日はいよいよシダを探しに行きます!
持ち物として、シダ植物の図鑑と、胞子の形や色を観察するためのルーペを持って行きます。

ーー 今回は細かい部分の違いがカギとなるから、ルーペは必須ですね!

川上 まずは、西粟倉の中心部で、街中で見つけられるシダを探します。水路脇の建物の陰になっているところに、色んな種類のシダが生えている場所を早速見つけました!

清水 最初は、このシダのイメージそのもの!であるシダの同定にチャレンジすることにしました。

川上 第2回でご紹介した同定ポイントに沿って、まずは葉の付き方から絞り込んでいきます。

シダ植物を同定してみる

清水 おさらいすると、中央の茎(葉軸)まで切れ込んでいる葉の形をしているものが単羽状、羽軸まで切れ込むものが2回羽状、中助まで切れ込むものが3回羽状だったよね。

川上 この葉っぱは、羽軸まで切れ込んでいるので、2回羽状かな。

清水 2回羽状の種類が載っているページを見ていきながら、残りの同定ポイントを観察して絞り込んでいこうか。

川上 そうしよう。次は小羽片の形だよね。かなりぎざぎざが多いね。この時点で、ベニシダ、ヘビノネゴザ、イヌワラビあたりに絞れそうだよ。

ぎざぎざのある小羽片

清水 お、すでに3つに絞れた!そうしたら、他の特徴を見ていこう。胞子嚢はどんな感じ?

川上 茶色で、逆ハノ字ですごくたくさんついているよ!初めてじっくりシダの胞子嚢を見たけど、結構迫力あるね…。

葉の裏には胞子嚢群が逆ハノ字でびっしりついています

清水 ベニシダは胞子嚢が丸いから、違うね。イヌワラビ、ヘビノネゴザは似ているかも!

川上 今気が付いたけど、ヘビノネゴザは「平地には少ない」という特徴があるみたい。一方で、イヌワラビは「庭や公園、道端などいたるところで見つかる」とあるよ。イヌワラビが一番似ているのではないかな?

清水 確かに!葉柄の形でチェックしてみよう。イヌワラビでは、「鱗片は褐色で細長いネクタイ形」と書いてある。「ネクタイ形」って難しいけど…。

川上 でも褐色ではあるし、似ていると思う!あと、イヌワラビの特徴として「軸が赤紫色」を帯びることがある」って書いてあるよ。これも赤紫色っぽく見えない?

写真だと伝わりづらいですが、軸は赤紫色を帯びているように見えます

清水 ほんとだ!これは「イヌワラビ」で同定しよう!

川上 1つ目のシダは、無事に同定できたようです!

ーー イヌワラビは、もしや山菜のワラビの仲間?と思いましたが、調べると、有毒成分が含まれていて食べられないようです。残念…うっかり採取して食べないように気をつけないといけないですね。さて、次はどこへ行きましょう?

清水 今度は街から離れて、標高1000mの林道ダルガ峰線を走りながら、山地のシダを探しにいきます。

川上 カエルが産卵場所として利用しているような、人工林に隣接した水のたまり場の近くで、シダが多い場所を見つけました。

清水 先ほどのイヌワラビとはかなり雰囲気が違いますが、この植物も地面から直接葉っぱが出ており、シダ植物のようです!

川上 次はこのシダを同定していきます。

清水 まず、葉のつき方を見よう。これは葉軸まで葉が切れ込んでいるので、「1回羽状」のタイプかな。

川上 そうだね。小さい葉(羽片)の形はどうなっている?ぎざぎざはあるかな。

清水 ぎざぎざはないよ!1回羽状タイプのシダで、羽片のぎざぎざがない種はヤブソテツ、コウヤワラビ、シシガシラの3種類だけど…シシガシラはそっくりじゃない?

川上 ほんとだ!葉柄の特徴は一致しているかな?図鑑には、「短くて、線形でやや厚い鱗片がついている」と書いてある。

清水 地面から直接生えてきているように見えるくらい、葉柄は短いし、葉柄には線形で茶色の鱗片がついているよ。このシダは「シシガシラ」だね!

川上 もっと群生しているところではふさふさと広がって伸びる葉の集まりを獅子の頭に例えたことから、この名前になっているみたい。なんだかかっこいいね。

清水 ところで、シシガシラの葉の裏には胞子嚢が見当たらないけど、なんでかな?

川上 シシガシラは1つの株の中で、光合成を行う栄養葉と、胞子をつける胞子葉を分けているタイプらしいよ。今回観察したのは、栄養葉の方だったので、胞子嚢がなかったみたい。胞子葉は、今回見つけた株の中では確認できなかったなあ。

※その後調べていくと、日本海側の多雪地に生えるシダで、シシガシラによく似た特徴をもつ「ミヤマシシガシラ」という種類も存在することが分かりました。シシガシラとは、「葉の下半分の葉軸が紫色っぽいこと」で見分けられるようです。生育分布としては、ミヤマシシガシラの可能性もありますが、今回の観察では葉軸の紫色は確認できなかったので、シシガシラと推測しています。

清水 これまでどれも同じに見えていたシダ植物でしたが、4つのポイントをおさえると順調に同定を進められました!

ーー 見え方が変わってくるのは観察の醍醐味ですね!

(次回に続きます)

シリーズちぐさ研究室の研究日誌

関連記事

ページの先頭へ戻る Copyright © Nikken Sekkei Construction Management, Inc.
All Rights Reserved.