大人も夢中になる?虫網を使わない虫の捕まえ方③ビーティング
ちぐさ研究室の研究日誌 #1
岡山県・西粟倉村で活動する「ちぐさ研究室」のお二人と、季節ごとに実験や観察を楽しむ連載。初回は虫網を使わない虫の捕まえ方を、4回に分けて紹介していただきます。
○登場人物:川上えりか、清水美波(ちぐさ研究室) 植野聡子(新林編集部)
③ビーティング
ーー ここまで「イエローパントラップ」「ピットフォールトラップ」と仕掛け系が続きましたが、次は何でしょうか?
川上 3つ目は、「ビーティング」です。
清水 ビーティングは名前の通り「beat = 打つ」ことで虫を捕ります。
ーー 子どもの頃、木を叩いてクワガタを捕まえている同級生を見て、荒々しくて気が引けたのですが…あれも一つの捕獲方法だったんですね!
川上 原始的な方法ですね。パッと見ただけでは気付かない米粒くらいの虫を生きたまま観察できるのが強みなんです。運が良ければ大きめのカミキリムシなども落ちてくるかもしれません。
ーー なるほど。大きな虫より小さな虫捕りに向いているんですね。
清水 やり方としては、枝や幹を棒で叩いて、枝や葉に隠れている甲虫やクモなどを、下で待ち構えるネットなどに落とします。棒と傘があればひとまず実験できますが、傘で受け止めるのがちょっとな~という方向けに、今回はお手軽な作り方を紹介しますね。
川上 西粟倉の森でやってみると、小さなクモや、ゾウムシの仲間が見つかりました。周辺の木を叩いてみたけどあまり多くは捕れませんでした。より葉っぱが食べられている木や、樹液を多く出す木ならもうちょっと虫が集まっていたのかもしれません。
ーー どんな状態の木だと、虫がたくさん捕れるのか比べてみるのも面白そうですね。
清水 虫捕りに熱中すればするほど難しい技術や大がかりなトラップが必要な気がしてしまいますが、初心に戻ってこんな方法も試してみてはいかがでしょうか。
ーー ビーティングは仕掛けて待つ時間がいらないので、遠くに出掛けた際にもできそうです。ビーティングのやり方は下記を参考に、そして虫捕りの注意点もよく読んで行ってみてください!
(次回へ続きます)
ビーティングのやり方
[材料]
・叩く棒×1
・洗濯ネット(平面の長方形型)×1
・配線カバー(洗濯ネットの対角の長さより長いもの)×2
・紐
・キッチンバサミ
[作り方]
1.配線カバーを洗濯ネットの対角の長さにカットする。
2.配線カバーを、洗濯ネットの中で交差するようにして入れる。
3.配線カバーの交差するところを、紐で固定する。
[設置]
1.利き手で棒を持ち、反対の手でネットを持つ。
2.叩くところの真下にネットを配置し、棒で枝を叩く。
コツと注意点
・虫食いが多い木では、より虫が集まっている可能性が!
・叩く前に、周囲にハチの巣がないかよく確認する。
撮影:Atsushi Akiyama
注意点
・私有地に設置するときは、所有者に許可を取りましょう
・公園等に設置するときは、管理者に許可を取りましょう
・設置したまま回収を忘れて放置してはいけません
・ハチや毒を持った虫が集まっているときもあります。採集するときは注意しましょう
・捕まえた虫はその場で放すか、最後まで責任をもって飼いましょう。別の場所に放したり、飼っている途中で逃がしてはいけません
参考文献
『博物館のプロのスゴ技で自然を調べよう (全4巻)』
少年写真新聞社
共著:小川 誠/奥山清市/矢野 真志
協力:西日本自然史系博物館ネットワーク
https://www.schoolpress.co.jp/topics/item/c-681_1.html
山岸健三,2006.昆虫採集と標本整理(昆虫の生物多様性調査と環境評価のために:2006年版).
http://www-agr.meijo-u.ac.jp/labs/nn006/entomol/manufacturespecimen.pdf
シリーズちぐさ研究室の研究日誌
ちぐさ研究室の研究日誌
岡山県・西粟倉村で活動中の「ちぐさ研究室」によるちょっと本格的な実験や観察の数々
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[ちぐさ研究室の研究日誌 #1] 新連載スタート!ちぐさ研究室のお二人と季節の実験や観察を楽しもう。
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