続・身近な「岩石」を調べてみよう!~益富地学会館出張編~ ③地学会館で研究していること
ちぐさ研究室の研究日誌 #10
岡山県・西粟倉村で活動する「ちぐさ研究室」のお二人と、季節ごとに実験や観察を楽しむ連載。第10回のテーマは、昨年5月のテーマだった「岩石」の続編です。岩石の鑑定をしてもらいに、京都まで行ってきました。
▷①いざ京都へ!
▷②岩石を鑑定してもらおう
▶︎③地学会館で研究していること
▷④展示室を見にいこう!
○登場人物:川上えりか、清水美波(ちぐさ研究室) 植野聡子(新林編集部)
研究室をご案内いただきました
西粟倉村から持って行った石の肉眼鑑定がひと段落。担当いただいた藤原先生によると、本当に同定しようと思ったら、「岩石薄片」という岩を薄く削った標本を「偏光顕微鏡(へんこうけんびきょう)」という特殊な顕微鏡で観察し、鉱物の比率などから特定する必要があるのだそうです。詳しくお話を伺う中で、ご厚意で偏光顕微鏡と薄片を見せていただけることになりました。
偏光顕微鏡を覗いてみると
薄片は、岩石を3~4cm四方程の大きさに切り出した後、約0.03mmの薄さになるまで砥石で削って作ります。偏光顕微鏡の仕組みはとても複雑なので細かくは割愛しますが、この薄片に特殊な光を通すと鉱物の種類や向きによって異なる色が発色し、それを大きな手掛かりのひとつとして鉱物の鑑定を進めることになります。


薄片を1枚切り出すのには、ものにもよりますがだいたい約1時間くらいかかり、特に最初は均一な厚さに仕上げるのが難しいとのこと。岩石の勉強の基本になるので、大学で地質や地球科学などを専攻する学生は実習で通る道のようです。
かんらん石、黒雲母、石英、斜長石…といった鉱物を聞いたことがあるでしょうか。偏光顕微鏡で見た岩石薄片には、これらを含む様々な種類の鉱物が含まれます。鉱物によってその形や偏光による色の付き方、発色が異なり、その割合や分布の仕方から岩石を特定します。
薄片を作るための設備も大掛かりで偏光顕微鏡の扱いも難しいため、自宅での趣味にするには少しハードルが高いかもしれませんが、益富地学会館はもちろん、地質学系の博物館、研究施設では薄片製作体験や偏光顕微鏡での観察体験を開催しているところも多いので、ぜひチェックしてみてください。
益富地学会館『岩石薄片教室のご案内』https://masutomi.or.jp/pages/55/detail=1/b_id=604/r_id=459#block604-459
また、画像をオープンデータとして公開したり、閲覧できるようにしているサイトもあります。万華鏡のようでとても美しく、岩石の知識がなくても見ているだけでうっとりしてしまいます。参考に、岐阜聖徳学園大学教育学部川上研究室が公開している画像集をご紹介します。
岐阜聖徳学園大学教育学部川上研究室 理科教材データベース『岩石薄片画像集』http://www.ha.shotoku.ac.jp/~kawa/KYO/CHISITSU/ganseki2/index.html
今、研究されていること
その後藤原先生の研究デスクで、最近鹿児島で採取された玄武岩や桜島の溶岩、砂鉄を見せていただきました。噴火の際に蒸気が出るので、岩石には気泡がたくさん空いています。


最近地学・岩石の研究分野では、岩石に含まれる細かいジルコンという鉱物を探して年代測定をするなどの研究が主流になっているそうです。しかしその方法は岩石を砕いて肉眼で特定の鉱物を探しだすところから始まるというもの。科学技術の発達により電子顕微鏡やX線検出器での分析ができるようになった今でも、最後は人間の気力がものを言う地学・岩石分野に、ますますロマンを感じた見学でした。
参考
- 『石ころ博士入門』
著者:高橋直樹・大木淳一 /発行年:2015年/出版社:全国農村教育協会
シリーズちぐさ研究室の研究日誌

ちぐさ研究室の研究日誌
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