昆虫たちのためのホテルを作ってみよう！　③インセクトホテル作りイベントレポ

岡山県・西粟倉村で活動する「ちぐさ研究室」のお二人と、季節ごとに実験や観察を楽しむ連載。第9回のテーマは「インセクトホテル」です。昆虫のためのホテルとは？

　▷①今、昆虫たちが減っている？
　▷②インセクトホテルの作り方
　▶︎③インセクトホテル作りイベントレポ

○登場人物：川上えりか、清水美波（ちぐさ研究室）　植野聡子（新林編集部）

ーー　この秋に西粟倉村でインセクトホテル作りイベントをされたそうですね。

川上　2025年9月、西粟倉村で共同菜園「新宅のおすそわけ畑」を主催している福井啓太さんと、インセクトホテル作りイベントを開催しました。
福井さんはご自宅の近くにある耕作放棄地を、ご自身だけではなく地域の方とも一緒に作業や収穫を楽しむ共同菜園として運営しています。定期的にイベントも開催しており、今回ちぐさ研究室にお声がけいただきました。

清水　今回は6名の方にご参加いただきました！まずはすでに設置されているインセクトホテルを見に、福井さんの畑に。今回使う巣材である竹筒に集まる狩りバチは、幼虫の餌としてイモムシを巣に持ち帰る習性があります。畑にインセクトホテルを設置することで、葉物野菜を食べてしまうイモムシを減らす効果も期待できます。

ーー　インセクトホテルがあることで、野菜が虫に食べられるのを防ぐこともできるんですね。これは人間にとってもありがたい存在…!!

川上　どんなところに、どんな目的で設置するのかをイメージできたら、早速インセクトホテル作り開始。改めてインセクトホテルがどういうものか、集まる昆虫や世界の取り組みをご紹介。市民研究などにも活用されています。

清水　いよいよインセクトホテル作りスタート！外箱を組み立て、中に詰める巣材を選びます。今回は一軒家らしい斜めの屋根にしたので、くぎを打つのに少し苦戦。くぎで木材が少し割れてしまったりしましたが、ちょっとの隙間や穴は気にせずOK！

川上　巣材には竹筒と穴をあけた木片を用意しました。竹筒によって直径も壁の厚さも違うので、配置を考えるのもまたひと悩みです。

清水　無事みなさんのインセクトホテルが完成しました！お互いに見比べてみると、性格や意図が反映されて違いがとても面白い。

ーー　みなさん、どんな意図で制作したのか気になりますね。インセクトホテルの設置や管理で注意することはありますか？

川上　設置は風通しが良く湿気が溜まりづらい場所にし、カビが生えたり老朽化したら掃除や交換をおすすめすることをお伝えし、それぞれにお持ち帰りいただきました。実際に住み着くまでには1〜2カ月かかりますが、どんな虫が来たのか聞ける日が楽しみです！

ーー　みんなで制作すると、材料や道具もシェアできますし、わいわい話しながら作ることができてより楽しい時間になりますね。イベントから2ヶ月近く経ったので、そろそろ虫たちがやってきている頃でしょうか？

清水　今回、イベントに参加して頂いた村内のゲストハウス「あわくら温泉元湯」のスタッフの方に、現在のインセクトホテルの様子を伺ってみました！

スタッフさん　元湯の立地は裏山があり、目の前には川が流れ、自然環境がとても豊かです。
インセクトホテルは薪棚のある玄関先に設置しました。

スタッフさん　すると数日後にはひと部屋埋まっていて、「もう入居してくれたの！」と驚きました。ありのままの自然も美しいけれど、人が少し工夫して整えてあげるだけで、昆虫たちの住みよい環境がつくれることを、インセクトホテルづくりを通して実感しました
また、散歩しながら松ぼっくりや木の実などを見つけると、「これもインセクトホテルになりそう〜」と、新たな視点が増えたことも嬉しく感じています。

スタッフさん　元湯を訪れる皆さんにも、足元の小さな自然に目を向けるきっかけになれば嬉しいです。素敵な時間をありがとうございました！

川上　数日後に入居が始まっていたとは！昆虫たちにとっても、元湯さんは人気の滞在場所になりそうで、とても嬉しいね。

清水　ぜひ、松ぼっくりや木の実バージョンのホテルも見てみたいね～！これから越冬シーズンに入るけど、春の様子を聞くのも今から楽しみです。

ーー　イベントのその後のレポートもありがとうございます。参加者の方が、楽しみながら昆虫や自然環境へ関心が高まっていて素晴らしい取り組みだなと改めて感じました。
読者の皆さんも、本格的な冬が来る前にインセクトホテルを設置してみてはいかがでしょうか？