昆虫たちのためのホテルを作ってみよう! ①今、昆虫たちが減っている?
ちぐさ研究室の研究日誌 #9
岡山県・西粟倉村で活動する「ちぐさ研究室」のお二人と、季節ごとに実験や観察を楽しむ連載。第9回のテーマは「インセクトホテル」です。昆虫のためのホテルとは?
▶︎①今、昆虫たちが減っている?
▷②インセクトホテルの作り方
▷③インセクトホテル作りイベントレポ
○登場人物:川上えりか、清水美波(ちぐさ研究室) 植野聡子(新林編集部)
最近、昆虫を見ましたか?
ーー ちぐさ研究室の川上さん、清水さん、こんにちは!長い夏が終わって、西粟倉の秋はいかがですか?
川上 こんにちは、ちぐさ研究室です。暑さとの戦いに苦しんだ夏もようやく過ぎて、西粟倉では朝晩かなり肌寒く感じるようになってきました。あれほど毎日聞いていた蝉の鳴き声も聞こえなくなり、昆虫たちのにぎやかさも落ち着きましたね。ところで植野さん、昆虫の数が増えたな、減ったなと感じたことはありますか?
ーー この数年は、35度を超えると蝉さえ鳴かなくなるのを感じています。あと、最近の夏は蚊も少なくて、案外、気温が下がった今の時期の方が蚊に刺されたりしますよね。そういった意味では、夏を象徴する虫は減った、あるいは活動時期が変わったように思いますね。いかがですか?
清水 はい、同じくセミと蚊が特に印象的でした!私自身が感じていたのもありますが、林業の現場で働いている方からも「そろそろセミが鳴いてもいいのに今年は全然鳴かない」という話を初聞いたりと、季節の象徴だったものが失われつつある…という危機感がずっとあります。
日常生活の中では、カブトムシなど人気者の虫を除いて、昆虫が少ない方が快適さを感じる、という方が多いかもしれませんが、うっとおしく感じていたものも、いざ当たり前だと思っていたものが失われると恐ろしくもありますよね。
川上 その感覚も残念ながら誤りではありません。実は、過去40年間の昆虫減少に関する73件の研究例を検証した結果によると、今後数十年で世界の昆虫種、特にチョウ・ガ類やハチ類の40%が絶滅する可能性が示されています。かなり危機的な状況です。
参考:Sánchez-Bayo, F., and K. A. Wyckhuys. 2019. “Worldwide Decline of the Entomofauna: A Review of its Drivers.” Biological Conservation 232: 8–27.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006320718313636
この論文の中では、都市化などによる生息地の減少、気候変動、合成農薬や肥料の影響など、様々な要因が複合して昆虫の種数の減少を招いていると報告されています。
ーー え、40%ですか!すごい割合ですね。しかし、昆虫の種類が減ると、どういった危機があるのでしょう?
昆虫の種類が減ると、どうなる?
清水 これらの昆虫たち、中でもハチ類などは、植物の受粉を助けたり、害虫を食べたりすることを通じて、私たちが食べている農作物の生産にも大きく関わっています。
今は当たり前のように身近で育つ野菜や花たちも、昆虫たちの減少によって食べられなくなる・育たなくなる、という可能性があるんですね。
川上 こういう話を聞くと、なんだか壮大だし私たちにできることもなさそうだし、暗い気持ちになりそうですよね。
ーー 野菜やくだものの不作は消費者としても困りますが、とはいえ周辺に田んぼや畑が周囲にない地域に暮らしていると、自分一人が都市の中で何か効果的なことなんてできるの?と思ってしまいますね。
清水 でも、都市に住んでいても、楽しみながら昆虫の住処を増やすことに取り組める方法があるんです!
インセクトホテルとは?
川上 その一つが、今回ご紹介する「インセクトホテル(insect hotel/ 昆虫ホテル)」です。植野さん、「インセクトホテル」という言葉を聞いたことはありますか?
ーー 去年の夏の連載「巨人の肩の上で「論文」を読んでみよう」(https://sin-rin.jp/forescope/fun/4392)で、記事内では言及していませんが、生物多様性と建築をテーマにした論文をちぐささんたちと一緒に読んだときに「インセクトホテル」が出てきましたよね?実物は見たことがないので、実際はどんなものなのかは分からないのですが、ホテルという名前が可愛らしくて印象的だなと思っていました。
清水 名前から、何となく昆虫(インセクト)のための何かなのか…?ということは想像できるかもしれませんが、実際に目にしたことのある方は少ないのではないでしょうか。
「インセクトホテル」とは、「昆虫が巣を作ったり休息したりするために人工的に作られた生息場所」の総称です。木材や竹、藁や枯葉などの身近で手に入る自然素材を使って、昆虫たちが越冬したり、産卵したりできる生息場所を作ることで、昆虫たちが住むことができる場所を私たちの身近に増やすことができます。
参考:校庭の虫からはじめる生物文化多様性-E-STEAM教材 インセクトホテルー, 「1-2 生物多様性とインセクトホテル」, YNU里山ESD研究拠点
https://mushimushi-esteam.ynu.ac.jp/knowledge-1-2.html
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川上 ヨーロッパやアメリカなど欧州を中心に、世界各地でインセクトホテルを街中や公園、家の庭に設置する取り組みや、インセクトホテルを作るイベントなども開催されています。実際に「インセクトホテル」というワードをGoogle検索で調べてみると、こんなにたくさんの種類のインセクトホテルが見つかりました。

ーー 樹木の枝に穴を開けたものや、元々中が空洞になっている竹筒などが敷き詰めてある点は共通していますが、ホテル自体の形や大きさは多種多様ですよね。
清水 はい。インセクトホテルと一口にいっても、大小・デザイン性も様々です。自分の畑や庭をお持ちの方であれば、大きなインセクトホテルを設置することもできますし、軒下やベランダに設置できる小型サイズでも、十分に昆虫たちは集まってきます。ホテル仕様でなくても、竹筒や樹木の枝を束ねて吊るすだけでも、同じ機能を果たしてくれるようです。
ーー それであれば、都市のアパートなどでも設置できますね!
川上 はい。材料も、身近で手に入るものでOK。材料によって、集まる昆虫の種類も変わってくるようなので、使った材料と実際に集まった虫の関係性を観察するだけでも、プチ研究として楽しいと思います。季節が進むごとに、集まる昆虫やホテル内の様子(産卵や巣作りなど)の変化を追うこともできるみたいですよ。
ーー 好みのデザインや形で作ることができる点もいいところですね。子どもから大人まで一緒に製作工程から楽しめる気がします。
清水 知らず知らずのうちに、私たちの身の回りから姿を消しつつある昆虫たちが、少しでも快適に過ごせる場所を、楽しく作っていきませんか?
ぜひ一緒にインセクトホテル作りに挑戦していきましょう!
(次回に続きます)
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