続・身近な「岩石」を調べてみよう!~益富地学会館出張編~ ②岩石を鑑定してもらおう
ちぐさ研究室の研究日誌 #10
岡山県・西粟倉村で活動する「ちぐさ研究室」のお二人と、季節ごとに実験や観察を楽しむ連載。第10回のテーマは、昨年5月のテーマだった「岩石」の続編です。岩石の鑑定をしてもらいに、京都まで行ってきました。
▷①いざ京都へ!
▶︎②岩石を鑑定してもらおう
▷③地学会館で研究していること
▷④展示室を見にいこう!
○登場人物:川上えりか、清水美波(ちぐさ研究室) 植野聡子(新林編集部)
益富地学会館へ!
ーー さて、益富地学会館に到着しました!京都御所のすぐ近くにこんな建物があったとは。いよいよ鑑定ですね。

川上 鑑定を始めて頂く前に、昨年春の私たちによる同定結果をおさらいしたいと思います。2種類を花崗岩、1種類を玄武岩、1種類を石英(鉱物)と予想していました。

(詳しい同定の過程はこちらの記事から)
ーー 果たしてこの同定結果は合っているのでしょうか?ここからは、私は撮影記録に徹したいと思います。
岩石の肉眼鑑定
清水 鑑定を担当頂く研究員の藤原先生の前に、石を準備しました。(2)の岩石(予想:花崗岩)は、同じグループに分類した石の中でも、特徴に幅があったので、2つの石 (2-1と2-2) を鑑定して頂くことにしました。

川上 では早速、鑑定を始めて頂きます!まずは、(2)-1の石から。私たちの中では、花崗岩ではないかと予想していました。

先生 (2)-1は花崗岩ですねえ。
清水 おお、同定結果と一致しています!
先生 この岩石はちょっと特徴的な花崗岩ですね。石英が「ジケイ」をしています。
川上 すみません、「ジケイ」とは何でしょうか…?
先生 「ジケイ」というのは、「自形」と書きます。その鉱物特有の形・本来の形をしている、という意味です。この岩石の中には、石英が元々の形である六角形に近いような形をして入っているようです。岩石ができる時に、まず石英が結晶化したのかもしれません。
清水 あまり一般的な石英の入り方ではないのでしょうか?
先生 そうですね。花崗岩は、一般的に長石、斜長石、カリ長石、石英、雲母からできているわけですが、だいたい「他形※1」といって、鉱物本来の形をしていないことが多いんですよ。石英の形が非常に特徴的です。花崗岩の中でも、一般的な花崗岩とは出てきた場所が違うのかもしれないです。
※1 他形:先に結晶化(晶出)した鉱物のすき間に合わせた不定形の形

川上 なるほど…出てくる場所まで推測できるんですね…!驚きです。
清水 鉱物の細かい形まで観察できていなかったです。(2)-2の石も同じく花崗岩かなと推測したんですけど、だいぶ様相が違うので自信がないです。

先生 こちらの方が一般的な特徴を持つ花崗岩ですね。左の石とは違って、岩脈の中心部に入っている石だと思う。かくせん石みたいなのが入っているので、普通のアプライト※2よりは苦鉄質、石英が少なくて長石が多い感じですね。
※2 アプライト:花崗岩と鉱物組成が似ている、色のついた有色鉱物をほとんど含まない細粒の火成岩。

川上 同じ花崗岩でも、これだけ特徴にバリエーションがあるものなのですね。
先生 そうですね。先ほどの(2)-1の石はちょっと普通の花崗岩とは「顔」が違う感じですね。
ちぐさ 顔が違う…!?
ここで、(3)の鉱物も見て頂きました。
川上 この花崗岩を拾ったあたりで、こんな鉱物((3) 予想:石英)もたくさん落ちていたんですよね。これは石英で合っていますか?

先生 はい、これは石英ですね。こういった石英が花崗岩の中に入ってきているんだと思います。
清水 ありがとうございます!まず、1つ目の花崗岩と、鉱物の石英は推測が当たっていたことが分かって嬉しいです。
次は(4)の真っ黒の石。

川上 こっちは図鑑を見る限りだと玄武岩かなと推測したんですけど…。
先生 あんまり玄武岩ぽい感じではないなあ。玄武岩の場合は、長石とかの斑晶(はんしょう)※3があるものだけど、それが見られないね。泥岩などの堆積岩じゃないかな?
ちょっと変成作用を受けている感じがする。一部が紫っぽい感じがしませんかね。
※3 斑晶:肉眼でも見えるほどの割合に大きな鉱物結晶
清水 紫っぽい、と言われて改めて見ると紫っぽい気もするかも…。でも黒としか認識していませんでした。

先生 マグマなどの熱による接触変成作用を受けて、ホルンフェルス化※4しているのかもしれません。泥岩がホルンフェルス化を受けると、黒雲母ができて紫っぽい感じになるんですよね。元々は泥岩だけど、熱を受けているのかも。
※4 ホルンフェルス化:マグマの熱(接触変成作用)によって、元の岩石(主に泥岩や砂岩)が変成すること
川上 どういった特徴から、熱を受けていることが分かるのでしょうか?
先生 泥岩と比べたら、半面が粒が粗い、結晶化している感じがする。わずかに紫がかっているのは、変成作用を受けて黒雲母ができているからではないかと思います。
元々は泥岩の場合は細かい石英、長石、粘土分から成るのですが、その粘土分のところが熱を受けると黒雲母に変質してくるんですよ。
清水 このわずかな色の違いや結晶の様子から、そんな推察ができるんですね!全然読み取れませんでした…。
先生 正確なところは岩石の薄片プレパラートを作って、顕微鏡で観察しないと分かりませんが、肉眼でもある程度推測がつきますね。ぱっとみたら泥岩、という方もいると思います。
川上 玄武岩とは全然違うのでしょうか?
先生 そうですね、玄武岩も真っ黒のことが多いですが、かんらん石とかの斑晶が見えるはずです。それに比べると、この岩石は斑晶があまり見えず、一様ですね。

清水 よく分かりました。改めて西粟倉の地質図を見ると、半分くらい泥質片岩となっています。もしかするとこの岩石は泥質片岩なのでしょうか?
先生 片岩は、一定方向に割れ目ができたり、もっと粒が粗くなるはずなので、少しこの石の特徴は違いますね。この石は、泥質頁岩といった方が合っているかもしれません。
川上 泥岩もしくは泥岩が変成作用を受けた泥質頁岩である可能性が高いですね!こちらの石は、私たちの「玄武岩」推測は外れました…。でも、真っ黒の石でも、斑晶が見えるかどうか、というポイントで玄武岩かどうかを判断するヒントを学びました!
最後は、(1)の花崗岩予想の石です。

清水 これも花崗岩ではないかと予想したのですが、いかがでしょうか?
先生 これは中を割ったら感じが違うと思うけど…火成岩っぽいかな?細かい長石が変質したような模様が見えるので、案外玄武岩かもしれないですね。

川上 なんと、こちらが玄武岩ですか?
先生 ルーペで見ると細かい点々が見えるでしょう?こういうのが石英や長石などだと思います。変質はしていますが、これは玄武岩の可能性があると思う。

清水 先ほど教えて頂いた、「斑晶が見える」という玄武岩の特徴があるということですね。

先生 観察する時には、風化している面・風化していない面を両方見ることをおすすめします。今見ているのは風化した面ですが、割ったときに出てくる、風化していない面は真っ黒だと思うんですよ。
川上 え、中は真っ黒なんですか…!表面に出ているのは風化した色なので、白っぽいということなんですね。なかなか割れなかったので、中の色まで確認できていませんでした。次回採取する時は、必ず両方の面を観察してみるようにします。
これにて鑑定が完了しました!結果としては以下のようになりました。
| ちぐさ研での推測 | 鑑定結果 |
| (1)花崗岩 | 花崗岩 |
| (2)花崗岩 | 玄武岩 |
| (3)石英 | 石英 |
| (4)玄武岩 | 泥岩(泥質頁岩) |
清水 花崗岩と石英しか合っていなかったね…。図鑑で写真と見比べるだけではなくて、含まれている鉱物の特徴や割合、風化している面としていない面の比較をする大事さなど、私たちが知らなかった見極めポイントをたくさん教えて頂いてとても勉強になりました。
川上 何万年も前のマグマの作用の後とかが今も残っていて、それを石の特徴から推測できるのが純粋にかっこよくて、ロマンがありました。最後に、初心者が石の同定をする時のポイントを教えて頂けますか?
先生 鉱物を同定するときには、まず粗い結晶が集まっているのか、細かい結晶があるのか、それとも細かい石基(せっき)※5の中に粗い組織がある斑状組織をしているのか、といった「組織」をまず観察することが大事ですね。あとは中に含まれている鉱物の種類を調べていくことですね。
ある程度採取した岩石の種類が増えてきたら、次はぜひ薄片を作ってみるといいですよ。
※5 石基:大きな鉱物結晶の周りのほとんど粒が見えないのっぺりとした部分
ちぐさ 薄片づくりにも挑戦して、より深掘りしていきたくなりました!藤原先生、本当にありがとうございました!
次回は、引き続き益富地学会館を堪能します。
注意点
- 鑑定依頼に際しては、事前の日程相談が必要などのルールがあります。肉眼鑑定に際してのお願いをご確認ください。
参考
- 『石ころ博士入門』
著者:高橋直樹・大木淳一 /発行年:2015年/出版社:全国農村教育協会
シリーズちぐさ研究室の研究日誌

ちぐさ研究室の研究日誌
岡山県・西粟倉村で活動中の「ちぐさ研究室」によるちょっと本格的な実験や観察の数々

大人も夢中になる?虫網を使わない虫の捕まえ方①イエローパントラップ
[ちぐさ研究室の研究日誌 #1] 新連載スタート!ちぐさ研究室のお二人と季節の実験や観察を楽しもう。

大人も夢中になる?虫網を使わない虫の捕まえ方②ピットフォールトラップ
[ちぐさ研究室の研究日誌 #1] 虫に落とし穴をしかけてみると...?

大人も夢中になる?虫網を使わない虫の捕まえ方③ビーティング
[ちぐさ研究室の研究日誌 #1] 原始的な虫捕りにチャレンジ!

大人も夢中になる?虫網を使わない虫の捕まえ方④ライトトラップ
[ちぐさ研究室の研究日誌 #1] 光に集まる虫を観察してみよう!

まだ見ぬ生きものを求めて!土の中を観察してみる ①土壌動物は面白い!
[ちぐさ研究室の研究日誌 #2] 冬の研究テーマは、土の中の生きもの。面白い土壌動物たちに出会おう!

まだ見ぬ生きものを求めて!土の中を観察してみる ②吸虫管ってなんだ?
[ちぐさ研究室の研究日誌 #2] 土壌動物を捕まえる吸虫管作りと観察道具の準備をしていきましょう。

まだ見ぬ生きものを求めて!土の中を観察してみる ③土壌動物はどこにいる?
[ちぐさ研究室の研究日誌 #2] 土の採取と土壌動物の捕獲をしてみよう!土壌動物はどんなところにいるのかな?

まだ見ぬ生きものを求めて!土の中を観察してみる ④顕微鏡で観察してみる
[ちぐさ研究室の研究日誌 #2] 西粟倉村の土にはどんな生物がいるのかな?

春の「雑草」探偵になってみよう! ①「コドラート法」で調査してみよう!
[ちぐさ研究室の研究日誌 #3] 春の研究テーマは、雑草!どんな植物が生えているのか徹底調査しよう。

春の「雑草」探偵になってみよう! ②同定大会 花編
[ちぐさ研究室の研究日誌 #3] いよいよ調査開始!図鑑を片手に花のついた植物を同定してみよう。

春の「雑草」探偵になってみよう! ③同定大会 草編
[ちぐさ研究室の研究日誌 #3] 次はレベルアップ!花がついていない草を同定していこう。

春の「雑草」探偵になってみよう! ④結果発表とまとめ
[ちぐさ研究室の研究日誌 #3] 調査完了!全部でいくつの植物を見つけられたかな?

巨人の肩の上で「論文」を読んでみよう ①生物視点の建築について知りたい
[ちぐさ研究室の研究日誌 #4] 今回のテーマは、巨人の肩の上に立つ!?「論文」を読んでみよう。

巨人の肩の上で「論文」を読んでみよう ②生物×建築?一体何から調べたらいいのやら…
[ちぐさ研究室の研究日誌 #4] 気になるテーマの論文を見つけるには...?

巨人の肩の上で「論文」を読んでみよう ③建築学の論文を生物学視点で読んでみる
[ちぐさ研究室の研究日誌 #4] 建築学の論文をちぐさ研究室の視点で読んでみると...?

巨人の肩の上で「論文」を読んでみよう ④秋山さんを交えてディスカッション
[ちぐさ研究室の研究日誌 #4] 論文を読んでみて、どう思った?秋山さんと一緒に考えてみよう

木を見て森を知ろう!「毎木調査」をやってみよう ①毎木調査って何だろう?
[ちぐさ研究室の研究日誌 #5] 連載第五回は、毎木調査について。そもそも毎木調査って?

木を見て森を知ろう!「毎木調査」をやってみよう ②必要な道具と図鑑での調べ方
[ちぐさ研究室の研究日誌 #5] 毎木調査をするにはどんな準備が必要?道具と図鑑の読み方を知ろう。

木を見て森を知ろう!「毎木調査」をやってみよう ③調査をやってみよう!
[ちぐさ研究室の研究日誌 #5] いよいよ毎木調査!どんな木があるかな?

木を見て森を知ろう!「毎木調査」をやってみよう ④結果発表とまとめ
[ちぐさ研究室の研究日誌 #5] 毎木調査の結果をまとめてみよう!3年間でどれくらい成長しているかな?

身近なもので骨格標本を作ってみよう! ①骨格標本って作れるの?
[ちぐさ研究室の研究日誌 #6] 連載第6回のテーマは、骨格標本!「骨」の美しさに触れてみよう。

身近なもので骨格標本を作ってみよう! ②早速骨にしてみよう!
[ちぐさ研究室の研究日誌 #6] 連載第6回のテーマは、骨格標本!標本にするためにはどんな作業が必要?

身近なもので骨格標本を作ってみよう! ③組み立てて観察しよう!
[ちぐさ研究室の研究日誌 #6] 連載第6回のテーマは、骨格標本!組み立てた骨からどんな特徴が分かるかな?

身近な「岩石」を調べてみよう! ①どんな「石」があるか知りたい!
[ちぐさ研究室の研究日誌 #7] 連載第7回のテーマは「石」!住んでいる地域はどんな石がある?

身近な「岩石」を調べてみよう! ②石の採集に行こう!
[ちぐさ研究室の研究日誌 #7] 連載第7回のテーマは「石」!準備をして、いざ石採集へ!

身近な「岩石」を調べてみよう! ③石の種類を調べよう!
[ちぐさ研究室の研究日誌 #7] 連載第7回のテーマは「石」!採集した石をどう調べる?

身近な「岩石」を調べてみよう! ④石調べのまとめ
[ちぐさ研究室の研究日誌 #7] 連載第7回のテーマは「石」!石を調べて何が分かったかな?

初心者にもオススメ!?シダ植物調査をしてみよう ①シダ植物ってなんだ?
[ちぐさ研究室の研究日誌 #8] 連載第8回のテーマは「シダ植物」

初心者にもオススメ!?シダ植物調査をしてみよう ②シダ植物の観察ポイント
[ちぐさ研究室の研究日誌 #8] シダ植物はどんな構造をしている?

初心者にもオススメ!?シダ植物調査をしてみよう ③シダ植物を同定してみよう
[ちぐさ研究室の研究日誌 #8] いよいよシダ植物を探しに出発!

初心者にもオススメ!?シダ植物調査をしてみよう ④まとめ
[ちぐさ研究室の研究日誌 #8] どんなシダ植物が見つかったかな?

昆虫たちのためのホテルを作ってみよう! ①今、昆虫たちが減っている?
[ちぐさ研究室の研究日誌 #9] 連載第9回のテーマは「インセクトホテル」最近、昆虫を見ましたか?

昆虫たちのためのホテルを作ってみよう! ②インセクトホテルの作り方
[ちぐさ研究室の研究日誌 #9] インセクトホテルはどうやって作る?

昆虫たちのためのホテルを作ってみよう! ③インセクトホテル作りイベントレポ
[ちぐさ研究室の研究日誌 #9] インセクトホテル作りに挑戦!昆虫たちの住処を作ってみよう。

続・身近な「岩石」を調べてみよう!~益富地学会館出張編~ ①いざ京都へ!
[ちぐさ研究室の研究日誌 #10] 西粟倉で採集した岩石を持って、いざ京都へ!

続・身近な「岩石」を調べてみよう!~益富地学会館出張編~ ③地学会館で研究していること
[ちぐさ研究室の研究日誌 #10] 偏光顕微鏡で岩石薄片を見せてもらいました

続・身近な「岩石」を調べてみよう!~益富地学会館出張編~ ④展示室を見にいこう!
[ちぐさ研究室の研究日誌 #10] 最後はお楽しみの標本展示室とショップへ!
関連記事

身近な「岩石」を調べてみよう! ①どんな「石」があるか知りたい!
[ちぐさ研究室の研究日誌 #7] 連載第7回のテーマは「石」!住んでいる地域はどんな石がある?

森林の世界はもっとずっと、面白い ちぐさ研究室/川上えりかさん 清水美波さん
[西粟倉の人たち③] 2021年に西粟倉村の地域おこし協力隊の2人で結成した「ちぐさ研究室」とは?

新林連載者がすすめる森にまつわる本
[森のほんだな #1] 森を題材にした本、日々の活動とリンクして森を感じた本...それぞれの“森にまつわる”本

新林連載者がすすめる森にまつわる映画
[森のえいがかん #1] 森が題材の映画、日々の活動とリンクして森を感じる映画...それぞれの視点による“森にまつわる”映画
