大人も夢中になる?虫網を使わない虫の捕まえ方①イエローパントラップ
ちぐさ研究室の研究日誌 #1
岡山県・西粟倉村で活動する「ちぐさ研究室」のお二人と、季節ごとに実験や観察を楽しむ連載。
初回は虫網を使わない虫の捕まえ方を、4回に分けて紹介していただきます。
○登場人物:川上えりか、清水美波(ちぐさ研究室) 植野聡子(新林編集部)
ーー ちぐさ研究室の川上さん、清水さん、こんにちは!
10月になってまだまだ暑い日もありますが、夜はスズムシの声が聞こえてきたりと、ようやく秋の気配を感じるようになりました。西粟倉はいかがですか?
川上 わたしたちが活動する西粟倉村は、秋になって、最低気温が10℃前後の日も増えてきてめっきり涼しいですね。飛んでいるトンボやチョウの飛ぶ高さや動きの激しさも、穏やかになってきた印象です。
ところで、虫はお好きですか?
ーー う〜ん。好きかと言われると、はい!とは言えないですね。。子どものときは、カブトムシとか手で捕まえたりした記憶もあるのですが、大人になってだんだんと苦手になってしまいました。でも、新林の取材を始めて、虫のことももっと知りたい、できれば仲良くしていきたいという気持ちが芽生えつつあります…!!
清水 いいですね。確かに、大人になるにつれて、さわらなくなった方も多いかもしれませんね。でも大人になった今こそ分かる別の楽しさもありますよ。
大きなクワガタやチョウもいいですが、今こそ虫網では採れない小さな虫、地面を歩き回っている飛べない虫、夜しか行動しない夜行性の虫など、「まだ名前が分からない虫」をじっくり観察してみるのはいかがでしょうか。
ーー 虫網でない虫捕りですか?虫網って子どもが持つイメージが強いので、虫網以外の虫取りの方法があったら、大人でも楽しめるかもしれないですね。
川上 では、さっそく始めてみましょう!
①イエローパントラップ
清水 まず最初は、「イエローパントラップ」という方法です。
パンとは「フライパン」などの「パン」で平たいお皿を意味します。黄色の平たい容器(pan)に水を張って、飛び込んできた虫を捕まえるトラップです。
ーー 黄色、というのがポイントなんですか?
川上 そうです。容器の黄色を花などの蜜資源だと思い込んで、飛び込んでくるんですよ。青や白でも引き寄せられる虫もいますが、一番多くの種類に効果的なのは黄色だと言われています。
ーー へー、虫も色が分かるんですね。でも黄色の平たい容器を探すのは難しいかもしれません。
清水 紙皿を黄色に塗ったものでも大丈夫ですよ!
川上 このイエローパンに洗剤を数滴入れた水を入れ、地面の上に設置します。丸1日~2日ほど設置しておくと、十分な量の虫を捕まえることができます。
ーー 放置しておくだけでよいなんて、虫網で捕まえるのと比べたらとても簡単です。どんな虫が集まるんですか?
川上 アザミウマ、ヨコバイ、ウンカ、タマバエ、ハチ、アブ、、などちょっとマニアックな虫の生態調査に利用されています。ただ洗剤を使うので、採集した虫は死んでしまいます。
清水 今回は建物が近くにある狭いエリアの森で採集してみました。
丸1日置いただけで、水面が埋まるくらいの量の虫を捕まえることができました。普段意識しないだけで、これだけハチやアブなどの小型の虫が私たちの身近に生きているかんだなぁと、実感しましたね。
ーー なるほど。自宅の庭やベランダなどでやっても面白そうです。
川上 周囲を飛んでいると怖く感じる2~3cmの大きなアブも、捕れてじっくり観察すると、とても迫力があってかっこいいよね。
清水 そうそう。トラップを置いた場所によって小さなハエやアブばかりのお皿、比較的大型の虫が多いお皿、など違いがあったのもおもしろかったよね。周りの木の種類だったりすみかの位置で影響を受けているのかな?
川上 スギヒノキだけの森と色んな樹種が生えている森、標高が違う森、など村内の違う森同士を比べても面白そうだね。お皿の色を変えると集まる虫も変わるようなので、それも試してみたい!
ーー いいですね。読者のみなさんもぜひ、いろいろな色のお皿で試して比べてみてください!トラップの作り方は下記を参考に、そして虫捕りの注意点もよく読んで行いましょう。
(次回へ続きます)
イエローパントラップの作り方
[材料]
・イエローパン(紙皿を黄色に塗ったものでもよい)
・水(1皿あたり約150ml)
・食器用洗剤
・お茶パック
・アルコールを入れた容器
[方法]
1.イエローパンを土の上に置く。傾斜がある場合は少し埋める。
2.容器の7-8割くらいまで水を入れる。
3.洗剤を2-3滴たらして完成。1日~2日間ほど設置する。
4.お茶パックなど濾しとれるものを使って、お皿の中の虫をこしとる。
5.濾しとった虫を、アルコールを入れた回収用の瓶に入れて持ち帰る。
※こしとる方法や、瓶に入れる方法は場所や道具によってやりやすいやり方で問題なし。
コツ
・水が少なすぎると設置中に乾いてしまうので、容器の7-8割は入れておく。
・あまりに傾いた場所には置かない。
・3日以上置くと腐り始めるのでその前に回収する。
撮影:Atsushi Akiyama
注意点
・私有地に設置するときは、所有者に許可を取りましょう
・公園等に設置するときは、管理者に許可を取りましょう
・設置したまま回収を忘れて放置してはいけません
・ハチや毒を持った虫が集まっているときもあります。採集するときは注意しましょう
・捕まえた虫はその場で放すか、最後まで責任をもって飼いましょう。別の場所に放したり、飼っている途中で逃がしてはいけません
参考文献
『博物館のプロのスゴ技で自然を調べよう (全4巻)』
少年写真新聞社
共著:小川 誠/奥山清市/矢野 真志
協力:西日本自然史系博物館ネットワーク
https://www.schoolpress.co.jp/topics/item/c-681_1.html
山岸健三,2006.昆虫採集と標本整理(昆虫の生物多様性調査と環境評価のために:2006年版).
http://www-agr.meijo-u.ac.jp/labs/nn006/entomol/manufacturespecimen.pdf
協力:上森教慈(九州大学)
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