春の「雑草」探偵になってみよう! ①「コドラート法」で調査してみよう!
ちぐさ研究室の研究日誌 #3
岡山県・西粟倉村で活動する「ちぐさ研究室」のお二人と、季節ごとに実験や観察を楽しむ連載。春の今回は、あちこちで芽吹き始めた「雑草」を徹底調査!調査の様子を4回に分けて紹介していきます。
▶️①「コドラート法」で調査してみよう!
▷② 同定大会 花編
▷③ 同定大会 草編
▷④ 結果発表とまとめ
○登場人物:川上えりか、清水美波(ちぐさ研究室) 植野聡子(新林編集部)
あちこちで「雑草」が芽吹き始めました!
ーー ちぐさ研究室の川上さん、清水さんこんにちは!5月になって新芽のみずみずしさ、木々や草花の彩りを感じる季節になってきましたね。西粟倉の冬から春はどんな様子でしたか?
川上 今年の冬は全国的に雪がとても少なかったようですが、西粟倉村も例にもれず「雪がこんなに降らなかったことは今までない」とあちこちで耳にします。
春先の芽吹きもとても早く、舗装のすき間や空地、庭先や畑などあちこちで緑が顔を出しています。そんな緑を見つけた時、「雑草だなー」と思って通り過ぎることもしばしばではないでしょうか。
ーー そうなんですよね。雑草たちにもそれぞれ名前があるんだろうな、とは思うんですが。。
清水 それは大変もったいない!「雑草」とひとくくりにしてしまうには、あまりにも個性的な面々だからです。しかし、ただ個性的だからと植物の紹介をしてもあまり面白くありません。せっかくなので今回は、ちょっとしたすき間でもできる「雑草」の調査をご紹介したいと思います!
ーー 「雑草」の調査って、探偵になったみたいで面白そうです!調査はよくやるのですか?
川上 じつは、私たちちぐさ研究室も雑草が含まれる草本類(ものすごくざっくりいうと木ではなく草)にはとても疎く、この調査を機に調べているものも多くあります。全部分からなくても大丈夫、一緒に楽しみましょう!
ーー はい!
「コドラート法」で調査しよう!
ーー 雑草の調査はどんな風にやるのですか?あちこちに生えている草花を全て調べるのは骨が折れそうです。
清水 そうですね。畑など広がった土地では全部を調べるのはとても疲れてしまうので、「コドラート(方形区)法」という方法で調査するのが一般的です。コドラートとは「正方形・長方形の枠」という意味で、その枠の中の個体数や種類を調べつくすことでその土地全体のサンプルとする方法です。
ーー ひとつの部分を徹底的に調べるんですね!どれくらいの範囲で調べるのがいいですか?
川上 コドラートは調べたい対象のサイズに合わせて調整します。今回の対象は小さな草類になるので50cm四方のコドラートを設定しますが、例えば樹木を調べるときは数10mのコドラートを設定したりします。
ーー 50cm四方であれば、庭などで気軽に始めることができそうですね!どんな場所に設定するのがおすすめですか?
清水 1つのコドラートでも十分「何が生えているか」を調べることができますが、乾いたところと湿ったところ、また日当たりが良い場所と悪い場所など対照的な環境に複数コドラートを設定したり、等間隔に複数コドラートを設定することで全体の傾向を推察することもできます。
今回は気軽な調査なので、1つのコドラートで調査してみます!
コドラートを設定しよう
川上 今回は西粟倉村内の宿泊施設「あわくら温泉元湯」さんの敷地内に色んな種類の植物が生えているところがあったので、そこで調査をすることにしました。
清水 場所を決めたらコドラートを作ります。今回は分かりやすいように大きめの杭とカラーテープを使っていますが、割りばしやタコ糸で十分です。メジャーを使って正方形を作って、範囲が分からなくならないようにします。
採取するときの注意点
・私有地で土壌を採取するときは、所有者に許可を取りましょう
・公園等で土壌を採取するときは、管理者に許可を取りましょう
コドラートの作り方
調査する場所がアスファルトだったので、このコドラートは違う場所に例で作っています。
1. メジャーで50cmを測ります。
2. 四隅に杭を打ち込んでいきます。
3. 杭にカラーテープを巻き付けます。
これでコドラートが完成!実際に調査する場所は杭が刺さらないようなところだったので、カラーテープを石でおさえて範囲を示してみました。
さて、このエリアの中には何種類の植物がいるでしょうか?
次回は実際に調査を開始していきます!
撮影:Atsushi Akiyama
シリーズちぐさ研究室の研究日誌
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