GISで、地図とデータと仲良くなろう! ③QGISで地域の情報を地図にしてみよう!
ちぐさ研究室の研究日誌 #11
岡山県・西粟倉村で活動する「ちぐさ研究室」のお二人と、季節ごとに実験や観察を楽しむ連載。第11回のテーマは、「GIS(地理情報システム)」です。GISが無料で使えるソフトで遊んでみました。
▷①GISって?
▷②GISを扱うソフト「QGIS」を使ってみよう!
▶︎③QGISで地域の情報を地図にしてみよう!
▷④QGISでオリジナルのバス密度マップを作ろう!
○登場人物:川上えりか、清水美波(ちぐさ研究室) 植野聡子(新林編集部)
作りたい地図のテーマを決めよう
ーー 前回はGIS(地理情報システム)を扱える無料ソフト「QGIS」をダウンロードしました。今回は、いよいよ地図作りですね!
清水 そうですね。「QGIS」を使って身近な地理情報を調べていきたいと思いますが、といっても、一体どんな地理情報が使えそうなのか、分からないですよね。まずは、第2回でご紹介した国土数値情報ダウンロードサービスにアクセスして、どんな情報があるか見てみましょう。

このサイトでは、水系や土地利用などといった自然関係のデータから、公共施設、交通に関するものまで、様々な種類のデータを利用することができます。

川上 今回は、西粟倉村が位置する岡山県についてのデータをダウンロードして、QGIS上で扱ってみたいと思います。どんな項目のデータがいいかな?
清水 私たちの興味は自然系のデータだけど、都市に住んでいる人でも身近に感じてもらいやすいデータがいいよね。公共施設とか、交通系の情報とか…。Googlemapなどでは可視化しきれない、GISの利点を生かしたデータを取り扱ってみたいよね。
川上 そうだね!公共施設は地図アプリでも網羅されていることが多いから、今回は、交通系の情報にどんなものがあるか見てみよう。

清水 バス停留所や漁港、人の移動量や船の航路など、色んなデータがあるね。試しにバス停留所のデータを見ると、2010年と2022年の2つの年代のデータが利用できるみたい。例えばこの2つの時期のデータを使って、岡山県のバス停の数の変化とか、面積あたりのバス停の数が多い地域を可視化してみるのはどうかな?
川上 面白そう!バス停は都市から山村まで日本全国にあるし、全国に住む読者の皆さんにも身近に感じてもらいやすそうだね。
清水 ということで、今回は岡山県のバス停のデータを使って、
- 岡山県のバス停の数は2010年から2022年まででどのくらい変化したのか?
- 岡山県内で、バス停の密度が高い地域はどこか?
を表示する地図を作ってみたいと思います。
QGISを使って地図を作ってみよう
【データの準備方法】
それではまず、データを準備していきます。
①国土数値情報ダウンロードサービスから欲しいデータをダウンロードする
はじめに、先ほど見た国土数値情報ダウンロードサービスのサイト内のバス停留所データのページにアクセスします。下にスクロールしていくと、都道府県を選択する画面があるので、今回は「岡山県」にチェックを入れます。

さらに下部に、岡山県の2010年、2022年のデータが表示されるので、チェックを入れてダウンロードします。2022年については2種類有りますが、今回は「シェープ形式」が含まれている方のデータを入手しておきます。

圧縮ファイルの形でダウンロードされるので、展開して保存しておきます。これでバス停データの準備は完了です。それぞれ、ファイル名を「2022年_バス停留所」などと分かるようにしておくと良いです。
②都道府県の境界線のデータをダウンロードする
次に、都道府県の境界線を表示させるためのデータを準備します。このデータも、同じ国土数値情報ダウンロードサービスから入手することができます。トップページで、「行政区域」という項目をクリックします。

バス停データと同じく、ページ下部に都道府県を選択する画面があるので、「岡山県」を選択し、最新の令和7年度のデータにチェックを入れてダウンロードします。

これも圧縮ファイルの形式になっているので、同じく展開して保存しておきます。
以上で必要なデータがそろいました!それでは、QGISを立ち上げましょう。
【QGISの使い方】
①QGISを立ち上げて「新規プロジェクト」を作成する。
立ち上げると、画面右下に「新規プロジェクト」という項目があるので、そこをクリックし、新しいプロジェクト画面を出します。

②岡山県の地図を読み込ませて表示させる。
まっさらな画面に、まずは岡山県の地図を表示させましょう。データの読み込み方法は色々あり、先ほどダウンロードした圧縮zipファイルをそのまま読み込ませることもできるのですが、今回はよりシンプルに進めたいと思います。
先ほどの「岡山県の市町村境界データ」のうち、拡張子が.shpとなっているシェープファイルをQGISの左下の「レイヤ」にドラッグ&ドロップします。

無事に岡山県が登場しました!初期設定は奇抜な色になってしまうので、後で変更します。
③地図にバス停データを重ねる
続いて、バス停データをこの上に表示させます。同じように、ダウンロードしたファイルに入っている拡張子が.shpのデータをドラッグ&ドロップします。2022年も同様に進めます。

どちらも緑色なので区別できない状態ですが、これで必要なデータをQGISに読み込ませることができました。
紫に緑…はちょっとおどろおどろしいですね。色を変更したい時は、レイヤの名前を右クリックし、「プロパティ」を開きます。

「シンボロジ」の設定に進むと、このような色を選択する画面が出てくるので、とりあえず白地に設定します。2022年のバス停のレイヤも同じようにプロパティを開き、色をベージュに変更してみます。

これで2つの時期のバス停を区別して可視化できました!
異なる年のデータを比較する
また、レイヤ名の左のチェックボックスのチェックを外すと、そのデータを非表示にすることができます。2010年と2022年でバス停の位置がどのように変わったのか、年ごとにバス停を表示させてみてみましょう。
並べて見ると、県南部の岡山市周辺はほとんどバス停の数が変わっていないことが分かります。ものすごい密集度ですね。一方で、県北部の真庭市では、2010年に存在していたバス停がかなり廃止されていることが読み取れます。おもしろい!
データの中身も見比べてみよう
ーー 2つのデータを地図に起こすことで、見比べやすくなり、視覚的に分かりやすくなることがたくさんありますね。全国的にバスの路線が少なくなっていると思いますが、この12年でだいぶ減ってしまったんですね。
清水 本当にそうでしょうか?ここで、バス停の具体的な総数の変化も見てみましょう。レイヤを右クリックして、「属性テーブルを開く」を押します。すると、各データの「中身」を見ることができます。

川上 テーブルの一番上に表示されている「地物数合計」が、2022年のバス停の総数になります。データ数は、5,679個でした。つまり、この地図上には5,679点が表示されているということですね。
清水 同じように2010年の属性テーブルも確認してみると、5,379個でした。意外にも、バス停のデータ数としては「300箇所」増えている、ということになります。
川上 県北部では2010年に存在していたバス停がかなり廃止されていたはずですし、近年は山間部のバス停はどんどん減っている印象がありますが、なぜでしょうか…?
ーー あれ?地図を見ると、2022年の方が点の数が減っているように感じていました。不思議だな…。
清水 今回は細かい分析はできないですが、もしかしたら県北部など山間部でのバス停の減少数を上回るくらい、岡山市内など中心部でのバス停数が増えているのかもしれません。
川上 ただ、違う年代のデータを比べる場合には、色々と注意が必要です。今回はその一つとして、整備しているデータ対象の変化に注意することを紹介します。例として、私たちが活動している西粟倉村での変化を見てみます。地図上からは、2010年にはバス停が2箇所あったものの、2022年にはなくなっていることが分かります。
清水 バス停の名前や運行会社を確認したいので、この点の情報を確認してみましょう。
2010年のレイヤをクリックしてから、上部の「地物情報を表示」アイコン」を押して、情報を見たいバス停をクリックしてみます。そうすると、右側のパネルでそのバス停の情報を見ることができます。

川上 この2つのバス停は、どちらも姫路~鳥取間の高速バスのバス停のようです。これらのバス停は今でも西粟倉村にあるのですが、なぜ2022年にはなくなっているのでしょうか?
ーー 実際にはなくなってないのに、地図上には表記されなくなってしまったんですね。
清水 こういう時には、データの出典や集計方法を確認します。先ほどのバス停留所データに戻って確認すると、2022年度(令和4年度)版のデータへの変更事項として、「データの整備対象からデマンドバスと高速バスを除外した」と書いてあります。つまり、この西粟倉村のバス停の変化は、バス停自体がなくなったわけではなく、データにするバス停の対象が変わった(高速バスのバス停がデータから除外された)ことによるものでした。
川上 こんな風に、年代が変わると整備されているデータの範囲や定義が変わっている可能性もあるので、注意が必要です。バス停の総数として2010年~2022年の間に300か所増えた結果になったのには、このようにデータの対象に変化があった影響もあるかもしれません。
もしくは、県北部など山間部でのバス停の減少数を上回るくらい、岡山市内など中心部でのバス停数は増加しているのかもしれません。このあたりは、さらに分析してみると面白そうですね。
ーー データの前提をしっかり確認すること、ときには疑ってみることも大事な視点ですね。
清水 ここまでで、岡山県のバス停の位置と2010年と2022年での変化を表示した地図を作ることができました!次回は、もう少し踏み込んで、岡山県のバス停の密度が高い地域を可視化してみます。
(次回につづきます)
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